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2007年11月19日(月) 14時50分

タクシー会社役員が1億円詐取、生活保護の補助制度悪用読売新聞

 札幌市のタクシー会社役員が、生活保護受給者が通院時に利用できるタクシー代の補助制度を悪用し、北海道滝川市にウソの申請書を提出して生活保護費をだまし取っていたことがわかった。

 昨年からの1年間で受給総額は約1億円に上るため、北海道警は19日午前、タクシー会社の捜索始めるとともに、関係者の一斉聴取に乗り出した。

 道警では役員の容疑が固まり次第、詐欺容疑で逮捕する方針。申請書は札幌市内などに住む生活保護受給者の夫婦が、タクシーを使用した名目で提出されており、道警はこの夫婦も不正受給に関与していたとみて調べている。

 夫婦は役員の知人で、昨年3月に滝川市に住民票を移動していた。道警では、夫婦側が役員に不正受給を持ちかけていた可能性もあるとみて、役員から詳しい経緯などを聞いている。

 通院目的で支給される交通費は、受給対象者が居住する自治体が審査して決めている。遠距離の通院で高額のタクシー代などがかかる場合、自治体の嘱託医が実際に通院が必要かを審査して、自治体が最終的に支給を決めている。

 滝川市は昨年度、医療扶助費名目で交通費など計約8億6000万円を支給しており、今回の事件で役員らは、市の総支給額の1割超を手にしていた。

 不正受給を受けていたのは、札幌市北区の介護タクシー会社「飛鳥緑誠介(あすかりょくせいかい)」の男性役員(57)。道警は19日午前、捜査員が同社の事務所などの関連先について、捜索を始めた。

 生活保護受給者は自家用車の所有が認められていないため、通院の際にタクシーを使用した際は、定額の生活扶助費とは別に交通費が全額支給されている。実際には、タクシー会社が代金を一時的に立て替え、後日、タクシー会社が自治体に料金を請求している。

 役員は、札幌市などに住む夫婦が、同市から約100キロ離れた滝川市からほぼ毎日、タクシーで札幌市内の病院まで通院していたとするウソの申請書を作成。申請したタクシー代は、1日当たり20〜30万円に上っていた。

 滝川市は、申請書類に不備はないとして全額の請求を認め、タクシー会社の口座に振り込んでいた。役員は、受給額の一部を個人で受け取っていたという。

 生活保護費は、生活困窮者の生活を援助するため、生活保護法に基づいて支給されており、支給対象は衣食など日常生活費のほか、医療、教育など8分野にわたっている。自治体が支給するが、4分の3は国が負担している。

 厚生労働省によると、2006年度の全国の不正受給総額は計約89億7600万円で過去最高を更新。1件当たりの不正受給平均額は61万2000円で、13件が詐欺罪などでの刑事告発された。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071119i305.htm