2007年11月19日(月) 10時00分
守屋喚問で飛び出した政治家2人の運命(日刊ゲンダイ)
2度目の証人喚問に呼ばれた防衛省の守屋武昌前事務次官が15日、防衛商社「山田洋行」の宴席に同席した政治家として、額賀財務相と久間元防衛相の名前をペラペラしゃべった。名指しされた2人はビックリ仰天だ。防衛族のドンだった金丸信元副総裁の流れをくむ旧経世会の幹部2人の登場で、福田自民党に激震が走っている。
≪久間防衛相≫
●逮捕説も飛び交う山田洋行との深すぎる関係
「久間先生との会は2、3年前だったと思う。六本木の旧防衛庁のそばにあった料亭ではなかったか」——。守屋前次官の爆弾証言に、永田町は大揺れだ。「検察捜査のメスは“久間ルート”にも及ぶんじゃないか」という憶測まで飛び交い始めた。
それでなくても、久間章生元防衛相は当初から怪しいニオイがプンプンだった。先月行われた衆院での喚問の翌日には、なぜか突然、解離性大動脈瘤手術を理由に入院。その後、宮崎が山田洋行から裏金を捻出して数十万円の“お車代”を久間元大臣に渡したとか、昨年12月に「スッポン接待」が開かれたなどと、立て続けに報じられた。
さらに、久間元大臣は守屋前次官と同様、巨大な「防衛利権」の陰で動き回っていた疑惑が浮上している。
「久間氏は、空自の次期輸送機CXエンジンの代理店契約を巡り、『日本ミライズ』と対立していた『山田洋行』側に付いて、ミライズの宮崎社長に圧力をかけていたといわれています。宮崎は昨年12月、当時防衛庁長官だった久間氏に取り入ろうと料亭で“スッポン接待”を開いた。山田洋行を割って日本ミライズを立ち上げてから、関係が悪化していたからです。ところが、久間氏は『オレは山田洋行の後見人だ』『山田(洋行の創業者)親子があいさつにきた』と、プレッシャーをかけたといわれている。また、今年6月のパリの航空ショーでは、防衛省の航空機課長が米GEの社長に、『なぜ日本ミライズに代理店契約をかえたのか』と迫る一幕があった。その航空機課長は『久間大臣の命令で行った』と話しているのです」(防衛省事情通)
総額1000億円ともされるCXエンジン利権を巡り、「守屋—宮崎ライン」と「久間—山田洋行ライン」が激しく争っていた構図が浮かび上がる。
「一方だけ罰するのか」という批判を恐れる検察は“久間ルート”にも重大な関心を寄せ始めているのだ。
2度にわたる証人喚問で「オレだけじゃない」とばかりに、しゃべり始めた守屋前次官の口から、この先何が飛び出すのか。いまだ“入院中”の久間元大臣は眠れない夜が続く。
≪額賀財務相≫
●現役大臣のうそ発覚に野党は「罷免要求の大攻勢」
「額賀さんのことは、ハッキリ覚えています。私が行きましたら宮崎さんが来た。それから額賀さんが来て最初に帰った」 守屋の証言に額賀福志郎財務大臣はのけぞったのではないか。額賀はこれまで「山田洋行の接待を受けたことはない」とシラを切り続けてきた。 ところが、守屋が国会で具体的にペラペラしゃべってしまったのだからタマらない。守屋によると、額賀は2年ほど前、来日したジェームズ・アワー元米国防総省日本部長を東京・神田の料理店に招いた際の宴席に同席していたという。偽証罪があるから、こんなことでウソはつくまい。
この守屋の発言があった後、さすがの額賀もしばらく遁走(とんそう)。事務所の女性秘書が「取材に対応できる者がおらず、証言の内容も存じ上げない」と謝っていたが、結局、財務大臣だけに逃げ切れず、額賀は夕方に報道陣に捕まってしまった。今さら前言を訂正できず、「(宴会同席は)全く記憶にない」と“記憶”で逃げるしかなかった。
ただし、福田首相には「宴席に出席していたとしても、すぐに退席したので誰がいたのか覚えていない」とちゃっかり説明。記憶のない人物がなぜ途中退席したことを覚えているのか、まったくツジツマが合わないが、出席したこととウソをついていたことは間違いない。
それでなくとも額賀財務相は、山田洋行の宮崎元専務に「結婚式出席のお車代として額賀先生に100万円を払った」と東京地検特捜部にしゃべられているだけに、今度という今度は絶体絶命の大ピンチだ。
「額賀は防衛庁長官だった98年にも、旧調達実施本部の背任事件に絡み、職員の天下り先を確保させた官財の癒着問題が起きたため、防衛庁長官を引責辞任している。参院で問責決議を出され、公明党の賛成もあって問責が可決した唯一の不名誉な大臣なのです」(政界関係者)
額賀は7年前にも、KSDから1500万円を受け取り、森内閣の経済財政担当大臣を辞任した。
格好の攻撃材料を得た野党側は、「額賀を国会に参考人で招致しろ。いや、証人喚問だ!」とボルテージを上げ、民主党の菅代表代行は「現職閣僚である額賀大臣を真っ先に追及する」と押せ押せムード。証人喚問は拒否できても、大臣だけに国会の委員会で連日、罷免要求を突きつけられる。二度あることは三度ある。財務相の辞任は避けられなくなってきた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071119-00000010-gen-ent