2007年11月16日(金) 17時20分
建築家、黒川紀章47年間の業績を振り返る(R25)
建築家の黒川紀章氏が、10月12日に心不全のため亡くなった。最近では都知事選に立候補したり、TVのバラエティ番組に出演したりと幅広い活躍を見せ、近年に手がけた六本木の国立新美術館もまだ記憶に新しい。そんな黒川氏の建築スタイルとは、いったいどのようなものだったのだろうか?
「その鍵となるコンセプトに、メタボリズム(新陳代謝)と共生の2つがあります」と、東海大学工学部建築学科の吉松秀樹教授が語ってくれた。
「メタボリズムとは、生物の細胞は新しく生まれ変わり続けるという概念を、都市や建築に生かした理論。増築を念頭に設計された大阪の国立民族学博物館がまさにそうですね。60年代に日本独自の建築運動として世界に向けて発信されました」(同)
これは建物は同じかたちで存在し続けるという常識を打ち破った作品だ。では、もう一つの共生とは?
「こちらは、プライベートとパブリックという2つの異なる空間の中間に、日本固有の“道空間”を設けるアイデアが発端です。西欧では広場がコミュニケーションの場ですが、日本では道空間がこれに当たると考え、博多の福岡銀行本店や高田馬場のBIGBOXなどに取り入れました」
そのねらいは建物内部や入り口に都市的なスペースを作り公共性を高めるものだ。
「黒川さんの素晴らしいところは、建築単体のデザインだけではなく、常にその周囲、都市や地域全体を考えた視野の広さです。だからこそ晩年は政界に興味を持たれたのではないでしょうか」
最後に吉松教授は、その人柄について次のように振り返った。
「数年前にもイタリアの授賞式でご一緒したのですが、小柄な体から非常に強いオーラを感じました。1日4時間しか寝ないという逸話があるほど、とにかくエネルギーの塊のような人でしたね」
彼の手がけた建築作品は、今後も世界中で生き続けていく。
(R25編集部)
「黒川紀章氏の主な建築作品」を見る
※コラムの内容は、フリーマガジンR25から一部抜粋したものです
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