2007年11月15日(木) 11時16分
公務員の給与基準に「最低賃金」を取り入れろ(ツカサネット新聞)
以前、ある場所で、公務員の給料を日本の財政の健全化まで段階的に下げていくべきだといった意味の意見を書いたら、たくさんの批判をいただいた。僕としては、公僕たるもの、それだけの覚悟を持って仕事に取り組んでほしいという意見表明だったのだが、そうは受け取られなかったようである。
だが、その後、果たして、国は真剣に財政健全化を考えているのだろうか。それを問えば、本年度の予算でも各省庁が求める金額は逆に増えているというから、心配するだけばからしくなる。国の事業には、やらないよりも、やった方がいいこともあれば、今、やらなければいけないこともある。緊急にやらなければいけないことを除いては、翌年に回すといった知恵は働かないのか。今回の予算案で1年待てないものが、どれだけあるというのだろう。公務員改革というのであれば、この役人体質をいかに変えるのかが、本当の公務員改革ではないのか。
そんなことを思いながら「yahoo!政治」というサイトを見ていたら、興味深い2つの法律が、今国会で審議されているのを目にした。1つは、最低賃金法の一部を改正する法律案であり、もう1つは、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案である。
注目なのは2番目だ。9月27日に発表された国税庁「民間給与実態統計調査」には、民間の平均給与が下がっていると書かれていた。この調査によれば平成9年をピークに民間の給与は下がり続けているという。これは、大企業だけではなく、従業員1人の事業所をも対象にしたものだ。民間の給与は下がっているのに反し、人事院の勧告はこの時期に、後者の法律案で公務員の給料を上げようというのだから何とも言い難い。
おまけに今回、政府・与党は国民感情を考慮し、省庁幹部の昇給を凍結する措置を行ったが、「賛成」をしながら、それに文句を言ったのが民主党だというから、一体、政党はどこを向いているのか、という気がする。
この公務員の給与でいつも問題になるのが、その基準となる民間給与水準である。人事院では昨年、官民給与の比較対象企業規模を百人以上から五十人以上に変更したというが、税金を納めているのは五十人以上の企業の従業員だけではない。公務員の給与水準は、国民全体の給与水準が反映されるべきだ。基準というのであれば、国税庁の調査の方が確かではないのか。まして、国は赤字財政である。ならば、基準を赤字企業オンリーの給与水準に合わせてもいいくらいである。
そんなことをすると、公務員にいい人材が集まらなくなると言う人もいる。だが、これまで国は、自らの安定とか安泰を求める人間ばかりを採用してきたから、公務員の不祥事ばかりが続くのではないか。今、公務員に必要なのは、頭の良し悪しよりも、国という赤字企業を自分が建て直そうという気概ではないのか。
そこで、提案だが、閣議では人事院に対し、「地域における官民給与比較の在り方を含め、民間給与のより一層の反映のための更なる方策について検討を行うよう要請する」と閣議決定したそうだが、その民間給与の反映として、国税庁の調査よりも、もっと切実で使いやすい指標、1つ目の法律案の「最低賃金」を使ったらどうだろう。これは生半可な数字ではない。地域ごとに各指数を取り入れて決められるもので、労使双方の都合が織り交ざった、企業給与の単なる平均値ではない現実の数字だ。中小企業の企業経営と、国民の最低限度の生活とのギリギリの線で決められる、国の経済状態をも示す生きた指標である。
長期的には、この最低賃金と生活保護、年金などの整合性が求められているという。その整合性を進めるためにも、公務員給与基準を最低賃金にして何か問題があるだろうか。念のために書くが、最低賃金は実際には上昇しているし、あくまで最低賃金は基準である。
最低賃金を基準にすれば、タウンミーティングで人の案内係をするだけで日当ン万円という額が、いかに法外なものあるか分かるのではないか。加えて、不祥事を起こした公務員の給与は、何%カットではなく、ためらわずに最低賃金にすればいい。それで生活ができないはずはない。これは、民の苦労を官が身をもって知るためにも、最良の方法だと思うのだが。
「公務員の給与基準に最低賃金を取り入れろ」。これが僕の提言である。
(記者:iko)
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