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2007年11月08日(木) 13時55分

11月8日付 よみうり寸評読売新聞

 〈和解は民事裁判の極意〉——生前の矢口洪一元最高裁長官にそう聞いたことがある。極意は奥の手、一番の決め手の意だろう◆氏は著書「最高裁判所とともに」でも和解についてこう書いた。「裁判は本来当事者にとってオール・オア・ナッシングのものであるが、日本では双方の歩み寄りによる調停や和解が納得のいく紛争解決の方法として多くの成果をあげている」◆大阪高裁が薬害肝炎訴訟で患者と国・製薬会社の双方に和解を勧告した。全国5地裁で争われ、原告・患者側の勝訴が続いてきたが、高裁段階に進んで、初の和解勧告が出た◆何の落ち度もないのに、血液製剤の投与で感染、長く病魔と闘ってきた患者側にとって、訴訟は時間との闘いでもある。国・製薬会社側の上訴は耐えられない思いだ◆そのうえ、厚労省の地下で眠っていた感染者症例リストの問題もある。原告12人がこのリストにありながら、裁判では投与を否定されていた。早く事実を告げられていたら……◆いたずらに訴訟を長引かせることなく、和解の知恵を生かし、早い解決を望む。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071108ig05.htm