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2007年11月08日(木) 17時43分

相撲協会は開かれた組織になれオーマイニュース

 けいこ中に急死した時津風部屋の元力士の事件を受けた「再発防止検討委員会」が、スタートした。この組織は、元力士が死亡したのを受けて設置されたもので、各部屋のけいこのあり方などを調査・研究し、あるべき力士の指導体制を提言することを目的としている。同委員会は、協会側8委員のほかに、外部から加えた5人の委員から構成されている。

 ただ、同委員会のこれまでの経緯からは、事件の真相究明についての動きをうかがうことはできない。残念ながら、この組織で事件の解明がされるかは定かではない。

 だが、この問題が発覚した当初、協会は事件の当事者である元時津風親方や亡くなった力士の兄弟子たちを個別に聴取した。誰もがその内部調査で、事件の真相が究明されると思った。しかし、出てきた答えは大ざっぱなもので、ファンの期待を大きく裏切った。結果的にそれは、元時津風親方を処分するための材料でしかなかった。

 結局、協会の事件に対する姿勢は、理事長の言葉を借りれば「警察に委ねる」一点張りで、協会自ら事件の真相に迫る意思はないようだ。

 そもそも、この事件の発覚当初から、協会は自らの問題なのに、「われ関知せず」と思わせるような、まるで人ごとの姿勢で、対応も後手後手かつ消極的であった。

 おもなものを並べると、6月に起きた今回の事件の放置。発覚後は、「事件は部屋の問題」と一蹴。この姿勢が世論や文科省の非難を浴びると、一転、元時津風親方の解雇処分に及んだ。また、新しく就任した時津風親方が初仕事として亡くなった元力士の実家への謝罪を手がけると、追いかけるように、理事長も謝罪に出向いた。

 また、今回の同委員会の設置も、文科省の強い行政指導に押されてのものだ。ちなみに、協会に対する文科省の行政指導は5項目あり、再発防止策の検討と、外部委員からなる同委員会の設置もこれに盛り込まれていたものだ。

 つまり、今回の事件で協会が自発的に動いた形跡はなきに等しい。

 これは何を物語っているのであろうか。ずばり、同事件に関する協会の言動の根源は、責任を回避すること一点に尽きる。終始、強固なまでの、この基本姿勢で貫かれている。だから、「事件の責任は部屋にある」「部屋のけいこの方法に協会は口出しはできない」「真相究明は警察に任せる」(いずれも北の湖理事長の発言を要約)ということになる。

 残念ながら、これが日本の国技を守るため、国からさまざまな優遇措置を受けている相撲協会の実態だ。

 これまで協会は、その歴史的、文化遺産的背景から、正面切って外部から批判を受けることは少なかった。これに、国民的人気と興行的成功が後押しし、協会や部屋独自の慣行が「わが世の春」を謳歌(おうか)することになった。結果として、外部から風のまったく入らない閉鎖社会となってしまった。

 今協会に必要なのは、新しい風だろう。残念ながら今の体制では、国技である相撲文化の継承も、公益団体としての責任も、十分とはいえない。今回の事件の対応を見ても、透けて見えるのは組織と役員の延命、保身だけだ。このままでは、日本の国技が危ない。

 そこで、思い切った人事改革を提言する。

 私の所属する農協(JAみやぎ登米)でも、新しい改革があった。これまで農協は、農家の代表が理事となって運営に当たっていた。だが、グローバリゼーション・規制緩和などの激しい競争化社会にあって、農家の専門性だけでは対応力も限界があるとして、金融・共済(保険)・販売部門などの、その道の専門家を理事に抜擢した。

 相撲協会も、元力士だけの組織では国際化・情報化社会に対応するマネジメント力は十分でないと見る。その欠如が、今回の問題や朝青龍問題で露呈したといえる。
 守るべき古き、良き伝統と、時代に即した新しいマネジメント。これを融合・両立させないことには協会の明日は危うい。そのために、「再発検討委員会」で登用した外部委員のように、理事会にも外部からの血(理事)を注入し、経営に参画させる時代ではないか。

 なにせ、土俵は丸く、あらゆる方位を向いているのだから。

(記者:藤原 文隆)

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