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2007年11月07日(水) 10時54分

どうする? テロ特措法(前編)ツカサネット新聞

「ねじれ国会」最大の争点となるはずだった“テロ特措法”の審議がいよいよ始まった。当初、民主党は11月1日の期限切れに追い込み衆議院解散をもくろみ、対する自民党は衆議院での再議決を行使してでも法案を成立させるのではとみられ、メディアが対立軸とあおって国民の興味を引いていた。だが実際のところ、自民党には何が何でも今国会で成立させるという意気込みはなかったし、民主党も現在、議論の矛先が「給油のイラク転用疑惑」や「守屋前事務次官の接待疑惑」になっている。(それはそれで大事であるが…)

ちょっと議論の本筋とははなれているのではないか。そもそも“テロ”とはなんであろうか。漠然と銃や爆弾で人を殺す行為と思っている人も多いかもしれない。実は明確な定義はない。定義づけすること自体が学問の研究対象になるほどである。一番簡単でわかりやすい表現は「政治的・宗教的目的を持って行う破壊行為」になると思うが、もちろんこれだけではすべての事象をとらえることはできない。

だが、上記の表現をとったとき、アメリカがアフガンやイラクに行った行為、あるいは古くは朝鮮半島やベトナムで行った行為(現地の人には決して古いこととして忘れることはできないでしょうが)はどうだろう。すべて“政治的な目的を持った破壊行為”ではないか。

アメリカがアフガンに侵攻するとき、ブッシュ大統領はテロ行為を「新しい戦争」と呼んだ。また侵攻を自国の「自衛戦争」であるとも述べている。テロと戦争を厳密に区別することは難しくなっている。

では、日本は何をなすべきなのか。
まずは、アフガンやイラクの問題を総括しなければ、何も始まらないのではないか。アメリカはアフガン侵攻の理由として、9・11テロ事件の首謀者がアルカイダのビン・ラディンであると断定しそれを匿っているとして、当時のアフガンのタリバン政権に対する攻撃を開始した。イラクは大量破壊兵器を保有しているとして、フセイン政権を攻撃した。

しかし、9・11事件がビン・ラディンの指示と証明されているわけではない。また、イラクで大量破壊兵器は見つからなかった。そもそもビン・ラディンもフセインも、一時はアメリカが利用していた人物。ビン・ラディンはCIAの関係者であったこともあるという。

私は学者でも専門家でもないので、なにもここで事実関係を争おうとは思っていない。だが、そういったあいまいな推測で戦争を開始したことの是非、それを支持した日本の対応の是非を総括しなければならない。

しかし、国会の議論や議員の発言、あるいは評論家の発言をみてもそういうものが見られない(共産党や社民党位)。皆、あの戦争を是とすることを前提に今後の対応策を話しているように思われる。

アメリカは9・11で3000名近い死者を出した。では、アフガンやイラクでどれくらいの死者が出たのだろうか。実はどこにも公表していないのだ。推測値としていろいろな機関から出ているものはあるが、かなりの幅がある。それでも信頼できるものの中から平均値をだせば、アフガンでは2万人前後、イラクでは7万人前後が亡くなっており、その6割前後は民間人と推測されている。

あの曖昧な攻撃理由のどこに、これだけの死亡者数を肯定できるものがあるのか。いや、いかなる理由があったとしても是認はできないはずである。しかし、日本はアメリカの攻撃を支持した。ここで総括をしないで議論を進めることは、この死亡者数をも容認することになるのではないか。

日本の安全保障は、アメリカに依存している部分が大きいことは確か。その上で日本は何を為すべきか。これについては後編を書こうと思っている。(続)



(文中、アフガンはアフガニスタン・イスラム共和国の略として使用しています)


どうする? テロ特措法(後編)


(記者:古俣)

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