恋愛感情につけ込んで商品を販売するデート商法で、不当に高値でコートを購入させられたとして、堺市内の男性(34)が大阪市内の衣料品販売会社などを相手に、代金ほぼ全額と慰謝料10万円計約105万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審が大阪地裁であり、会社側が請求を認諾し、請求全額の支払いに応じていたことがわかった。
デート商法については、被害者が羞恥(しゅうち)心から裁判などをためらうケースが多く、男性は「泣き寝入りしている人たちのためにも提訴した意味があった」としている。
1審・大阪簡裁判決などによると、男性は2004年11月中旬、大阪市内で開かれた人気ポップスグループのコンサートに出かけた際、会場近くの路上で、20歳代の女性から「服の卸売会社に勤めている。アンケートをお願いしたい」と声を掛けられた。携帯電話番号やメールアドレスなどを教えると、直後に「さっきはありがとう」とメールが届き、頻繁に連絡を取り合うようになった。
翌月、誘われて京都市内の展示即売会場へ。女性と上司から「仲良くしたい人には、いい物を持っていてほしい」「彼女は(展示即売会に)誰でも呼ぶような子じゃない」と約2時間にわたって勧誘され、95万円の毛皮のコートを買った。
その後、インターネットで、女性が別人にも同じような経緯で衣類を高値で販売していたことを知り、05年5月ごろ、リサイクル店でコートを売却。買い取り価格は1000円だった。
男性は昨年4月、「恋人のように親密な雰囲気を演出し、自由な判断能力を奪った。売買契約は無効」と提訴。会社側から代金の約9割近くの解決金で示談を提案されたが、「お金よりも判決で違法性を認めてほしい」と拒否した。
今年2月の1審判決は慰謝料請求は退けたが、コートの価値を1000円と判断し、「高品質と誤信させた」と売却代金分を差し引いた94万9000円の賠償を命令。会社側は控訴したが、今年7月に認諾した。認諾は原告の請求を争わずに受け入れる措置で、確定判決と同じ効力を持つ。
原告代理人の藤森克美弁護士(静岡県弁護士会)は「デート商法が裁判になるのは異例。認諾したのは実態が明らかになるのを避けたのだろう」と指摘。男性は「恥ずかしかったが、裁判をしてよかった。被害救済の先例になってほしい」と話している。被告側代理人の弁護士は「デート商法を認めたのではなく、裁判にかかる労力などを考慮した経営判断」としている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071107i507.htm?from=main5