2007年11月06日(火) 15時48分
築地市場移転、結論は来年5月以降(オーマイニュース)
東京都中央卸売市場(築地市場、中央区)の移転予定地・豊洲(江東区)の土壌汚染問題で、都の専門家会議(座長=平田健正・和歌山大学システム工学部教授)は5日、第5回会議を開き、来年にかけて行う詳細調査計画を詰めた。
前回、環境基準の1000倍を超えるベンゼンが確認されたことを受け、敷地全域で汚染の詳細を調べていく。具体的には、地下水と土壌を10メートル四方でボーリング調査し、対象の汚染物質が一定基準を超えて検出された場合に、その深層部分も調査することになった。約40ヘクタールの新市場用地に加え、道路になる部分も可能な限り調査するため、ボーリング地点は4100カ所にのぼるが、「5月の連休前にすべての調査を終わらせたい」(平田座長)という。
この日の会議では、前回までに間に合わなかった油汚染状況や発がん性物質であるベンゾピレンの調査結果が報告された。調査地点はもともと予定されていた11カ所に、前回環境基準の1000倍のベンゼンが確認された地点を加えた12カ所。
油汚染については、土壌で油臭が8カ所、油膜が5カ所、地下水で油臭が8カ所確認された。
ベンゾピレンについては、土壌で最高5.1ミリグラム/kgと高濃度の汚染が認められた。日本ではベンゾピレンの汚染基準は定められていないが、欧米の2〜3ミリグラム/kgという基準と比べるとかなり高いといえる。地下水でのベンゾピレンは最高0.0002ミリグラム/Lと、世界保健機関(WHO)の飲料水基準(0.0007ミリグラム/L)を上回る汚染はなかった。
これらの結果を踏まえて進められる詳細調査では、これまでの30メートル四方より細かな、10メートル四方のボーリングで土壌と地下水の採取を行う。対象はベンゼン、シアン、ヒ素、鉛、六価クロム、カドミウムの7物質。地下水質が環境基準の10倍を超えた場合、また対象物質の土壌溶出量や含有量が処理基準を超えた場合に、さらに土壌汚染対策に必要な調査を加えていく。
10メートル四方で4100カ所というのは、全国でも例のない大規模で詳細な調査となる。都は当初、今後10カ月、15億円ほどかけて実施していくとしていたが、「連休前くらいには調査をすべて終わらせておきたい。目標は3、4月ごろで、できるだけ早くリスク解析をし、提言をまとめる」(平田座長)との専門家会議メンバーの意向から、予定の半分の日程で調査が進められる。
これまで月1回のペースで開かれてきた専門家会議は、調査の間、半年以上休会になる。
会議後に会見した平田座長は、「地下水がどのくらい地表面に上がってくるかを心配していたが、一定の線で止まっているよう。やはり地表面に近い土壌をすべて入れ替え、地下水が上がってこないように、管理をしっかりやっていく方向になると思う」と、リスクを管理していく視点から提言をしていく考えを説明。
その上で、「リスクのある土地で、その管理の可能性を示すことが専門家会議の仕事。その提言を受けて、市場を移転するかしないかは都民の判断になる」と、割り切った立場を改めて強調した。
一方、市場移転に反対する水産仲卸業者の「市場を考える会」山崎治雄代表は、
「4100カ所という膨大な規模の調査になったのは、豊洲の厳しい状況を専門家の先生方が見た結果と受け止めている。犬も住まない、猫も寄り付かない、鳥も来ない土地に、本当に市場ができるのか。そんなところにカネを使うというのは、素人が見ても何か別の狙いがあるのではないかと思ってしまう。これからの詳細調査も注意深く見守っていきたい」
と話した。
(記者:軸丸 靖子)
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