船場(せん・ば)吉兆(大阪市)が菓子や総菜の消費・賞味期限を偽装して売っていた問題で、福岡市の店舗を統括する湯木尚治取締役は1、2の両日、朝日新聞の取材に応じた。「会社ぐるみ」を改めて否定したが、福岡市は組織的関与も視野に「原因究明が不十分」と再調査を求めている。
会見する船場吉兆の湯木尚治取締役=29日午前、福岡証券取引所で福岡市などの調査では、栗のふくませ煮や黒豆といった総菜でも期限切れ商品の販売が見つかった。これに対し、湯木取締役は「これだけ多くの非常識な販売を続けていたことに、心からおわびを申し上げたい。記録が残っているものについてはすべて調べた。これ以上の期限切れ商品の販売はない」と話した。
菓子類の偽装が発覚した10月28日以降、総菜の期限切れ販売については明言を避けていた。「総菜1品について従業員から不正販売の疑いの情報を得ていた。ただ、確証が十分に無かったので『調査中』と述べた。市の調査にも『総菜の不正はない』と言ったことは一度もない」
ただ、市によると、当初は「一切ない」と総菜の偽装を否定し、帳簿の納品数と販売数が合わない点を追及しても、伝票との突き合わせにもなかなか応じなかったという。市幹部は「隠蔽(いんぺい)体質」と批判した。これに対し「隠す意図は全くない。その時々で責任を持って言えることをしっかり説明してきた。隠蔽とは心外だ」と反論した。「販売責任者のパートの女性が仕入れや在庫の管理ができず、余った商品を売り切ろうとしたのだと思う」
湯木取締役本人や会社の関与については「会社ぐるみで不正を行ったということは断じてない」と否定。「福岡市に2店舗ある日本料理店の方に関心が向き、物販部門を十分管理できなかったのは事実だ」と釈明した。
31日に市に提出された改善報告書はわずかA4判1枚だった。市は、再提出を求めた改善報告書では、原因をしっかり分析するよう改めて求めている。