血液製剤フィブリノゲンなどによるC型肝炎感染問題について厚生労働省は02年、日本産婦人科医会から「80年代まで、C型肝炎はやがておさまる程度の肝炎と考えられていた」と報告を受けていたことがわかった。投与者の多い80年代に、産科医らがC型肝炎を肝がんなどに進行する危険な病気と認識していなかった恐れを強く示すものだが、同省は感染が疑われる418人のリストを製薬会社から得た後も、患者らに改めて告知していなかった。その理由を「医師が説明したはず」としてきた同省見解の根拠が、揺らぎかねない問題となりそうだ。
厚労省は02年、国と製薬会社の法的責任を問う声が強まったことを受けて調査。製剤の効能や副作用について医師の認識を調べるため、同医会などに意見を求めた。当時は、C型肝炎ウイルスに感染すると肝硬変や肝がんに進行する可能性が明らかになっていた。
同医会は同6月に提出した文書で、「80年代までは一過性の肝障害と考えられていた」と説明。C型肝炎ウイルスが特定され、検査が始まった後の「90年以降」に危険性を認識したとした。
フィブリノゲンが使われたのは主に80年代まで。02年7月に製薬会社から提出されたリストで投与時期が判明している368人でみると、89年までの投与が9割。出産時の出血で止血剤として使われた例が多く、産婦人科医の間に認識がなければ、患者にも知らせなかった可能性が高い。
厚労省の調査チームはリスト提出を受けた翌月、80年代に投与された人に病気の深刻さを改めて通知するなどの対応をとらないまま、解散。リストは今年10月まで5年間、放置された。
02年当時に同省医薬局長だった宮島彰・医薬品医療機器総合機構理事長は、今月22日の取材に対し「患者には医師から副作用情報が伝えられ、必要な治療を受けていたと認識していた」と患者に連絡する意識はなかったと話した。
一方、薬害C型肝炎訴訟の原告団の多くは「医師から正しい説明を受けていない」と証言。大阪弁護団の山西美明事務局長は「救えた患者がいたはずだ」と批判する。
http://www.asahi.com/national/update/1030/TKY200710300355.html