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2007年10月31日(水) 22時32分

栃木ネット心中者からのメールオーマイニュース

 10月28日、栃木県佐野市内の林道に止まっていたワゴン車の中で、男女4人が動かなくなっているのを、群馬県前橋市の男性が発見。110番通報した。調べでは、4人は栃木県足利市の男性(20)、東京都葛飾区の男性(38)、同台東区の男性(22)、それに群馬県佐波郡の女性(30)で、すでに死亡していた。車内には七輪が3台並び、燃え尽きた練炭があったという。

 この4人による自殺は、インターネットで知り合った見ず知らずの者同士による「ネット心中」とみられ、足利市の男性の自宅にあったパソコンには、他の3人とメールでやり取りした形跡があったとされている。

 この4人のうち、群馬県の女性Aさんは10月10日、私の個人サイトを通じて、「今練炭自殺を計画しています。自殺サイトで知り合った仲間もいます。私の話聞いてもらえませんか?」と私にメールを送ってきていた人物だ。

 そのメールによると、人生を賭けた美容整形に失敗したことが、自殺願望の理由だという。このメールだけでは、なぜ、美容整形の失敗が自殺願望につながるのか分からなかった。そのため、「ぜひ、お話を聞かせてください」とのメールを送った。

 私は11年前(1996年)から、自分のサイトを通じて、自殺願望者や自傷行為をする人たちの相談にのったり、彼らを取材したりしている。どのような経過を通じて私のサイトに辿り着いたのか不明だが、このAさんも、誰かに話を聞いてほしかったのだろう。

 メールを送ると、次のような返事だった。

 「手術した次の日から後悔の毎日です。その日はちょーど30の誕生日でした。 どうやら私は夢を見ていたようです。美容整形は魔法ではありませんね。 現実は金儲け主義の大型チェーンのクリニックに騙されていたようです。 整形する前から明日死んでもいいと思う人生でした」

 何か理由があって、美容整形をしようと思ったこと、その美容整形に失敗したということがわかる。その背景については、メールでは話しきれない、ということだったために、「会って話せませんか?」と聞いた。すると、「仕事があって、計画を進めなければならない」ので、会う時間がないと言ってきた。そして、Aさんは自殺系サイトでチャットすることを提案してきた。

 彼女とチャットしたのは、10月11日午前3時から4時の間。その内容をまとめると、Aさんが整形をするきかっけは、嫌いな父親に似ていたことと、友達から「眠そう」と言われていたことだった。父親が嫌いな理由は、「金にだらしない」から。パチンコにカネを使ってしまうらしい。ただ、家族の話に踏むこむと、「バラバラです」というものの、それ以上は話したくないと言っていた。

 この時点で、すでに、インターネットで知り合った心中志願者とは実際に会っている、とAさんはいう。新宿のカラオケボックスで打ち合わせを済ませていた。そのときは、Aさんを含めて5人だった。だが、うち女性1人を計画から外したという。その理由は、

 「(その女性は)男に復讐したいと言っていて、復讐できなかったら参加します? と聞いたら、その時になってみないとわからないと答えたから」

という。結局、この時はこの会話でチャットを終了したが、再び、チャットをすることはなかった。ただ、その後もメールは時々来ていた。

 「自殺掲示板に載せいろんな人と話しました。 練炭(を使って自殺)するのも難しいみたいですね。眠剤も強いものが必要みたいなので…でもあたしは諦めませんよ。今はそのことだけが生きがいです」

とのメールが届いたことがあった。私自身、実際に会えない以上、メールで話を聞くことしかできなかった。

 その後、練炭によるネット心中の報道があるたび、Aさんではないか? と思うような日々が続き、「群馬」「30歳」というAさんに該当するような報道があった。そして、匿名を条件にしたあるルートで確認すると、Aさんであることが判明した。

(記者:渋井 哲也)

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