受講料を前払いした生徒が、今後も英会話の授業を受けられるよう、関係者は最大限努力する必要がある。
英会話学校最大手「NOVA」が創業者の猿橋望社長を解任し、大阪地裁に会社更生法適用を申請した。負債総額は439億円に上る。
1981年に設立されたNOVAは、後発組だが、1000教室開設を目標に拡大路線を走ってきた。
現在、全国に約670の教室を持ち、受講生は30万人に上っている。外国人講師と社員は合わせて4900人いる。
「受講したい時間に予約ができる」と宣伝しながら、講師不足などから予約を断るといった例が相次いだ。中途解約にも応じず、今年6月、経済産業省から1年超の長期契約などについて、6か月間の業務停止命令を受けた。
これを機に生徒からの解約請求が殺到し、返金に応じられない状況に陥っていた。講師や社員の給与支払いも滞り、教室の閉鎖、休校が続出した。
猿橋社長は独断で、外資系ファンドを割当先とした新株予約権を発行するなど、資金調達に奔走していたというが、所在不明で同社幹部でさえ連絡がとれない有り様だったという。
このままでは再建はおぼつかない、という経営陣の判断が、社長解任につながったのだろう。
破産や任意整理に追い込まれれば、受講生は講義を全く受けられなくなってしまう。講師や社員も職場を失う。受講生や外国人講師らが大きな不利益を被らないようにしなければなるまい。
前払いの受講料は総額400億円に達する。だが、会社更生法では未払い賃金や税金の支払いなどが優先される。受講料を現金で一括して支払っていた場合、全額の返金は困難とみられる。
当面、大事なのは、早急にスポンサー企業を見つけることだろう。
NOVAは、売上高や受講生数の市場占有率(シェア)は、半分に近い。同じ業界の単一企業がこれを引き受けるには限界がある。小売りや情報関連など複数の企業が関心を持っているようだ。
保全管理人は、選定期間は「1か月以内」と述べ、引き受け手が見つからなければ破産手続きに入る意向を示した。
バブル崩壊後、英会話学校の破綻(はたん)が相次いだ。94年、全国に50教室を持っていた学校が経営破綻した際、NOVAが受講生を無料で引き受けたことがある。
経産省は、NOVAが最終的に再建できないケースも想定し、こうした生徒引き受けの先例も参考に、善後策を講じていくことが肝要だ。