鶏と地鶏って、どこがどう違うの? 鹿児島、宮崎の老舗(しにせ)百貨店が宮崎県産炭火焼き商品をインターネット販売する際、「鶏」とすべき所を「地鶏」と表記していたことが判明、公正取引委員会の調査を受けた。ただ、消費者や売り手にとって、その境界があいまいなのも事実。地鶏のPRに熱心な宮崎県の東国原英夫知事は「定義を厳密に整理する必要がある」として独自のガイドライン作りの検討を始めた。
宮崎県認定ブランドの地鶏「みやざき地頭鶏」=宮崎県日南市で
ブロイラーの鶏を「地鶏」と誤表記したことについて、宮崎山形屋の佐多芳大(よしひろ)社長は24日夜の会見で「担当者の単純な入力ミス」と説明。その上で「宮崎の鶏といえば、地鶏と呼ぶ習慣があったからではないか」と推測し、地鶏の定義を問われると「余り詳しくはないです」と答えた。
唯一、「地鶏」を規定しているのは、品質を保証する日本農林規格(JAS)法だ。99年に、(1)国内在来種の血が50%以上で出生したことを証明(2)生まれてから80日以上飼育(3)28日以後は地面を動き回るように飼育し、1平方メートルあたり10羽以下——との条件を課した。
ブロイラーは(1)の規定をクリアしていない時点で、JASによる地鶏ではない。だが、JASは任意の認証。「地鶏」と称して流通するすべての「鶏」が、この規定に沿う必要はなく、沿っているかどうかも不明だ。
宮崎市の会社員(31)は「オリの中で育てると『鶏』で、放して育てたものが『地鶏』でしょう?」。別の主婦(57)も「茶色の鶏が『地鶏』で、白いのが『鶏』じゃないの?」と話す。
市内の飲食店街には「宮崎地鶏」を掲げる店舗が軒を連ねるが、ある飲食店は「卵を産みにくくなった親鶏が『地鶏』としてメニューに並ぶこともある」と明かす。
宮崎県畜産課の担当者は「『地鶏』という言葉の定義そのものがあいまい。宮崎では庭先で飼う鶏をすべて地鶏と呼ぶ慣習さえある」と言う。
宮崎は全国一の「養鶏県」で、05年中に出荷されたブロイラーは約1億1000万羽。それに対し、JASに基づく、地鶏などその他の食用鶏はわずか75万羽に過ぎない。この中から、県畜産試験場の原種に由来する地鶏「みやざき地頭鶏(じとっこ)」を今年5月、県認定ブランドに指定。1平方メートルあたりの飼育数をJASより厳しい2羽以下に抑えるなどの条件をつけた。
偽装が表面化した秋田県の比内地鶏も、飼育期間150日以上、屋外で放し飼いなど独自の条件がある。
東国原知事は、今回の誤表記の背景に「定義のあいまいさ」がある点を重視。県独自の指針を作りたい意向だが、担当部署は「一つの県だけで決められる話ではない」と困惑気味だ。
山形屋の件では、公取委は、商品を実物よりよく見せかけようとしたとして景品表示法違反(優良誤認)の疑いで事情聴取したとみられ、県の担当者は、「今回の件で『少なくともブロイラーは地鶏ではない』などと公取委が示せば、それが今後の基準の目安になるのでは」と話す。
http://www.asahi.com/national/update/1027/SEB200710270001.html