軍需専門商社「山田洋行」(東京都港区)の元専務(69)が昨年、退社して新会社を設立する前に、山田洋行の米国子会社が管理していた株売却益約1億円を不正に引き出していた疑いが強いことが、関係者の話でわかった。東京地検特捜部は特別背任や業務上横領容疑にあたる可能性があるとみて元専務らから事情聴取している。特捜部は防衛省の装備品調達をめぐって、元専務と親密だった前防衛事務次官の守屋武昌氏(63)との関係についても解明を進める見通しだ。
株売却益1億円の流れ
元専務については守屋前次官と、山田洋行の関係会社が経営する埼玉県や千葉県のゴルフ場などで一緒にプレーし、利害関係者とのゴルフが自衛隊員倫理規程で禁じられた00年以降も続けていたことが判明。国会で前次官の証人喚問が行われる見通しとなっている。
元専務は昨年6月、山田洋行の経営権をめぐりオーナー側と対立して退任。同年9月に軍需商社「日本ミライズ」(港区)を新たに設立し、社長に就任した。
山田洋行関係者らによると、元専務は退職前の同年、山田洋行の米国法人「ヤマダインターナショナルコーポレーション」が自社の銀行口座で管理していた約1億円を日本に送金させ、退社後も山田洋行側に返金していないという。
この約1億円は、05年当時に山田洋行と関係が深かった会社で、部品製造会社との仲介業をしていた商社「エイベックス・エアロスペイス・コーポレーション」(米・カリフォルニア州)の関連会社の株を05年9月に売却して得た資金とされる。
元専務は、この約1億円のうち少なくとも約3000万円を他に流用した疑いが持たれている。
元専務側は、エイベックス社や関連会社の株の一部について自分に権利があり、株売却益約1億円も受け取る権利があると主張しているという。
山田洋行と日本ミライズは対立関係にあり、航空自衛隊次期輸送機CXのエンジン製造元の米ゼネラル・エレクトリック(GE)の代理店契約を巡る訴訟に発展している。
http://www.asahi.com/national/update/1023/TKY200710230258.html