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2007年10月21日(日) 08時01分

薬害肝炎 またずさん対応 厚労省に患者リスト 5年前把握も告知せず産経新聞

 血液製剤「フィブリノゲン」の使用をめぐる薬害肝炎問題で、C型肝炎を発症した患者に対し製薬会社が感染の告知をしていなかった問題で20日、厚生労働省にも患者のイニシャルや実名が書かれた資料が保管されていたことが分かった。早期に本人に伝えられていれば、患者が感染原因を把握でき、早期治療が可能だった可能性もある。製薬会社や厚労省のずさんな対応に批判が高まりそうだ。

 舛添要一厚労相は22日にも製薬会社の責任者を呼び、患者への連絡を要請。省内に当時の経緯や対応を調べる特別チームを立ち上げる方針。

 問題となっているのは、薬害肝炎が社会問題化した14年に、厚労省の報告命令を受けた田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ、ミドリ十字)が、医療機関からの副作用報告をもとに作成した418人分のリストに関連する患者の情報。

 リスト自体には、患者の氏名や病院名など個人を特定する情報は書かれておらず、これまで製薬会社側が患者個人を特定しているかどうかは明らかでなかった。

 しかし、今年9月の薬害肝炎訴訟の中で、原告の一人がリストに掲載されている患者と同一人物であることを製薬会社側が認めたため、製薬会社が個人を特定する情報を持っていることが発覚。

 さらに、19日になって厚労省内からも複数の患者のイニシャルや、少なくとも1人の患者の実名、医療機関、医師名などが書かれた資料が見つかった。厚労省はこれまで「製薬会社から個人情報の報告は受けていない」としていた。資料の作成経緯は不明という。

 舛添厚労相は20日、「まず全体像をしっかりと把握したい」とリストの詳細などの把握を急ぐ考えを表明した。しかし、製薬会社が個人情報を把握していることが分かった段階での国会答弁などで、「当時の国の対応は不十分だった」との見解も示しており、当時の厚労省の担当者らの責任問題にも発展する可能性も出てきた。

 患者救済の姿勢からほど遠い製薬会社や厚労省の姿勢が明らかになりつつあり、患者団体は反発を強めている。薬害肝炎訴訟の原告団は、製薬会社が個人情報を持っていることが明らかになったことを受け、「強い憤りを感じた。感染の理由すら知らずに亡くなったり、感染に気付かずに暮らしている人がいるかもしれない。一刻も早く(リストの患者に)告知すべきだ」(原告女性)。厚労省が患者の個人情報を把握していたことから、同省への反発も強まるのは必至だ。

 民主党は、厚生大臣経験者の菅直人代表代行が19日に舛添要一厚労相を訪れ、本人への早期告知や実態調査を求める「抗議要請書」を提出。菅代表代行は「(内部資料が隠された)薬害エイズの時とまったく同じ。反省が生かされていない」と批判していた。

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【用語解説】薬害肝炎

 昭和60年代に、出産や手術の際の止血用に投与された非加熱血液製剤によって、C型肝炎ウイルスに感染する薬害が起きた。国内で4万人が、感染の可能性が高い製剤を投薬されたとみられる。全国5カ所で計約170人が、国と製薬会社を相手取り損害賠償請求を起こしている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071021-00000042-san-soci