岡山市の紙製品卸会社「伊豫(いよ)商事」(破産手続き中)の役員らによる巨額詐欺事件で、同社専務の大島敏昭容疑者(59)=詐欺容疑などで再逮捕=らが、複数の宗教団体に多額の寄付を続け、総額が少なくとも数十億円にのぼることが関係者の話でわかった。みずほ、三井住友銀行など20を超える金融機関が融資した四百数十億円の一部が使われたとみられる。伊豫商事関係者は「寄付の一部は宗教法人を隠れみのにした資金隠しだった」と証言している。岡山地検は資金の流れの解明を進めている。
関係者によると、大島容疑者が寄付をしていたのは、兵庫や奈良、宮城県内の宗教団体など。
大島容疑者は健康に不安があるため、二十数年前から兵庫県内の宗教団体を信仰するようになった。この団体は信者30人前後と小規模だが、大島容疑者は2日に1度は早朝に訪れ、本堂で約2時間手を合わせて経を唱えていたという。
大島容疑者とともに、同社役員で関連会社「大喜」社長の西田嘉幸容疑者(48)=詐欺容疑などで再逮捕=も5、6年前から月に1、2度のペースでこの宗教団体を参拝していた。宗教団体側によると、大島容疑者について「月2回ずつ寄付してくれた」と話している。
また、大島容疑者は奈良県内の宗教団体も頻繁に訪れていた。この団体は「多額の寄付をいただいた」としている。
関係者によると、大島容疑者は、西田容疑者が買い取ったゴルフ場「ビックライザックカントリー倶楽部(くらぶ)」(仙台市)の購入時に、兵庫県内の宗教団体の代表者に相談。社員らには「良質の水がわき出るとお告げがあった」などと購入の理由を説明していた。
ゴルフ場オープン後、大島容疑者は社長室に豪華な神棚を設けてたびたび宮司らを招いて祈祷(きとう)を受け、数万から100万円を寄進していたとされる。
伊豫商事の関係者によると、「(大島容疑者は)宗教を深く信仰して多額の寄付をしていた」という。その一方で、同社幹部らがこれらとは別の近畿地方の宗教法人に、たびたび会社名義の口座から数千万円単位で送金していたといい、「幹部らは宗教法人を買い取り、寄付の形で多額の資金をプールしていた」と話している。
伊豫商事を中核とする企業グループがこれまで、融資された資金をゴルフ場(約30億円)やホテル(約3億円)の購入、ミネラルウオーター製造事業、映画の製作資金などに充てたことがわかっているが、大半の使途が不明のままだ。
http://www.asahi.com/national/update/1021/OSK200710200105.html