長野県小諸市の宗教法人「紀元会」の会員で、すし店経営奥野元子さん(当時63歳)が集団リンチを受けて死亡した事件で、県警が逮捕した家族4人と会員21人以外に、30人以上の会員が暴行の現場に居合わせたが、誰も止めず、警察などに通報していなかったことが16日、わかった。
小諸署捜査本部は、居合わせた30人以上の会員の中には、暴行に関与した者もいるとみて特定を急ぎ、事情聴取する。
調べによると、元子さんが集団リンチを受けて死亡したのは、会員が1人ずつ日常生活などの反省を述べる集会の場。「総裁」と呼ばれる教団トップを前に会員が反省点を述べ、それに対して「総裁」がアドバイスする形で行われる。通常は日中に開かれるが、リンチがあった9月24日は、「総裁」不在のまま夜にも集会が開かれた。
この夜の集会では、元子さんの二女、森美智子容疑者(26)(証拠隠滅容疑で再逮捕)の行いに問題があるとして、まず森容疑者と、夫の池勇治容疑者(30)の2人が暴行を受けた。さらに「娘が悪いのは母親に問題があるからだ」などとして、元子さんも呼び出され、集団リンチを受けたという。
この場には50人以上の会員のほか、傷害致死の疑いで逮捕された、教団創始者の娘である窪田康子容疑者(49)も同席していた。窪田容疑者は容疑を否認しているという。
集団リンチは同日午後11時半から約1時間、断続的に行われた。元子さんが息をしなくなったため、リンチは終わったという。元子さんに人工呼吸をしたり、元子さんの家族に「医者に連れて行きなさい」と勧めたりする会員はいたという。最終的には元子さんの長女、森久里子被告(37)と、元子さんの夫の奥野和宏被告(35)(傷害致死罪で起訴)が25日午前1時50分ごろ、病院に運んだが、約1時間後に死亡が確認された。