一九九七年末以来、死刑を執行していない韓国が十二月、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(本部ロンドン)の執行停止十年の基準で「事実上の死刑廃止国」となる。同国の市民団体は十日、ソウル市内で日本などから来賓を招き「死刑廃止国家宣布式」を開く。
宣布式を主催するのは「韓国死刑廃止運動協議会」などで、同協議会の会長を務める李相赫(イ・サンヒョク)弁護士は「大韓民国は死刑のない平和愛好国になろうとしていることを宣言したい」と話している。
同協議会によると、宣布式にはアムネスティや日本の死刑廃止運動団体のほか、加盟国がすべて死刑を廃止している欧州連合(EU)の団体などからも代表者らが参加する予定。
韓国で死刑が最後に執行されたのは、九七年十二月三十日。金泳三政権末期で、この日は二十三人が処刑された。
後任の金大中大統領は自ら政治犯として死刑囚になった経験があり、任期中に死刑は執行されず、現在の盧武鉉政権も執行停止を引き継いでいる。
ただ李弁護士は「昨年十二月から今年一月にかけ、法務当局が執行を画策した」とし、死刑制度を廃止する法案が国会で可決される見通しも立っていないという。
<メモ>事実上の死刑廃止国 アムネスティ・インターナショナルの分類で、軍法下など例外的な犯罪だけでなく、殺人など通常犯罪にも死刑を存置しているものの、10年間執行がなく、死刑を執行しない政策や慣例を持つ国。死刑を適用しないと国際的に公約している国も含め、今年9月現在、ロシア、ケニア、ミャンマーなど32カ国。死刑は全面的廃止国がEU加盟国やオーストラリア、南アフリカなど90カ国に上り、通常犯罪廃止国もブラジル、イスラエルなど11カ国。これに対し、通常犯罪で死刑を続けているのは日本、米国、中国、北朝鮮、イラクなど64カ国にとどまる。
(東京新聞)