日本証券業協会(日証協)は、全証券会社に対し、暴力団の証券口座を開設することを全面的に禁止し、違反すれば処分を科せるよう協会規則を改正する方針を決めた。
来年度中にも設立する第三者機関が全口座開設者の身元を審査、暴力団やその関係者と判断された人物には取引を拒否するよう義務付ける。現行制度では暴力団との取引を明確に禁じた規則はないが、証券市場が暴力団の資金源になっているとする警察当局からの指摘も踏まえ、実効性ある措置が必要と判断した。
日証協は、国内で営業する全証券会社(約300社)に適用されるルールを制定している自主規制組織。証券取引法に基づき、協会規則に違反した社に過怠金を科したり、協会員の権利停止を命じたりする権限が与えられている。
証券業界と暴力団との関係を巡っては、1991年に暴力団稲川会会長と大手2社との巨額取引が表面化。その後、協会の理事会決議で取引の「原則禁止」をうたったが、協会規則には盛り込んでおらず、各社の対応をチェックする仕組みもなかった。
このため、中小の証券会社の中には審査体制が不十分な会社もあり、大阪府警が今年摘発した株価操縦事件では、複数の暴力団関係者の口座が不正取引に使われていたことが発覚。警察当局は、依然として証券取引が暴力団の資金源になっているとみている。
日証協によると、審査を担当する第三者機関は2009年3月をめどに設立。大手など一部の証券会社は、独自の調査などで判明した暴力団や総会屋らの情報を保有しており、こうした人物を「反社会的勢力」と定義し、第三者機関でデータベース化する。
そのうえで、各証券会社に対し、国内で開設される1日計約5000の口座すべてについて、第三者機関に照会し、審査の結果、該当者とされた人物には取引を拒否するよう義務付ける。さらに、各社が全顧客との契約書に「反社会的勢力との関係が判明すれば取引を解除する」との規定を導入。これにより、審査時には判明しなくても、後に暴力団とわかれば口座を閉鎖できるようにする。
審査を尽くしても相手を見抜けなかった場合は例外だが、こうした措置を怠ったことが監査などで確認されれば、処分対象とする考えだ。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070927it05.htm?from=top