内閣府は、所管する独立行政法人「国民生活センター」の業務について、製品の安全性などを調べる商品テストを大幅に外部委託し、消費者からの直接相談は廃止する方針を固めた。身近な製品による事故や悪質商法が相次ぐなか、業務縮小すれば、消費者の視点からのチェック機能が衰えかねないと危惧(きぐ)する声もある。
商品テストは地方の消費生活センターの依頼や、消費者から寄せられた製品事故などに基づいて年間40〜50件実施。食品や家電、日用品などあらゆる製品を対象に、欠陥や性能などを調べて事故原因を究明し、問題があれば業界や行政に改善を求めてきた。自動車の走行テスト場では、安全性の検証もしている。
商品テストの結果によっては公正取引委員会に情報提供する。公道の走行が不可能な電動スクーターや、大豆イソフラボンを含む健康食品の誇大表示などは、景品表示法に基づく不当表示で業者に排除命令が出た。
メーカーが製品改善した例もある。車のパワーウインドーに幼児が挟まれる事故では自動車業界に事故防止措置を要望し、車に挟み込み防止機能が装備されるようになった。窒息事故が相次いだこんにゃく入りゼリーは現行法で規制するのは難しかったが、テスト結果の公表後、メーカーは販売を中止したり、製品を改良したりした。
委託先となる検査機関は製品評価技術基盤機構(NITE)や国立健康・栄養研究所、農林水産消費安全技術センター、産業技術総合研究所などが想定されている。だが、これらの機関は企業の依頼を受けた検査が多く、業者が作成した仕様書に記されていないような想定外の扱い方をした場合に発生する問題点を見つけられなくなる可能性がある。
また、国民生活センターで消費者から直接受け付ける相談業務もやめる。センターが06年度に受け付けた相談件数は約8500件。そのほぼ半数が、消費者から直接受けたもので、携帯電話やパソコンなどの通信サービスに関する相談が最も多い。残りは、契約が複雑で法解釈が難しかったり、消費者被害が広範囲にわたったりして、地方の消費生活センターから解決や処理を依頼・協力要請されたもので、今後も継続する。
業務見直しは、政府が進める独立行政法人整理合理化計画の一環。国内最大の消費者団体ネットワーク組織「全国消費者団体連絡会」の神田敏子事務局長は「製品事故や消費者トラブルが多発し、本来であれば消費者保護の充実を検討すべきなのに、整理合理化計画の一環で業務縮小されるのはおかしい」と話している。