指定暴力団住吉会の下部団体の組員に誤って射殺された韓国籍の日本語学校留学生尹元柱(ユン・ウォンジュ)さん(当時24歳)の遺族が、住吉会の西口茂男総裁と福田晴瞭会長、実行犯の組員ら5人に約1億4000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が20日、東京地裁であった。
浜秀樹裁判長は「住吉会の総裁と会長には、下部団体の組員に対する使用者責任がある」と述べ、5人に計約5900万円の賠償を命じた。
訴訟で、被告側は「住吉会は山口組のようなピラミッド組織ではなく、各団体が同格の連合体。総裁らに各団体の行為について責任はない」などと主張した。
しかし、判決は、住吉会が<1>下部団体に住吉会の名称や代紋を使わせ、その威力を利用した資金獲得活動を容認している<2>構成員に会費などを納入させている——ことなどから、西口総裁らは住吉会の事業について、下部団体の構成員を指揮監督できる地位にあったと指摘した。
その上で、尹さんの殺害について、「仲間の殺害に対する報復で、住吉会の威力、威信を維持回復するための行為の一環として行われた」とし、使用者責任が問われる「事業」と認定。トップを含む全員に賠償責任があると結論づけた。
判決などによると、尹さんは2001年、千葉県内の路上で、住吉会の下部団体の組員に、仲間の組員を殺害した犯人と間違えられて射殺された。実行犯ら組員3人は懲役10年〜無期懲役の判決が確定している。
指定暴力団トップの使用者責任を巡っては、山口組の下部団体の抗争に巻き込まれて射殺された警官の遺族が起こした訴訟で、最高裁が04年11月、山口組組長の責任を認めている。
原告弁護団は「今後、民事介入暴力を許さないという風潮を後押しする判決」と評価。尹さんの遺族も「被告全員に対する責任が認められたことにほっとしています」とコメントした。