群馬テレビ(前橋市)が今年度中の開局を予定している地上デジタル放送※の草津中継局を巡り、嬬恋村と長野原町が、県から求められた財政支出に難色を示し、9月議会への補正予算案提出を見送った。特に嬬恋村の熊川栄村長は「山間地域の自治体だけに財政負担を強いるのは、地方格差の象徴」とし、今後、山間地を抱える県内の他自治体にも呼びかけ、国と県に追加支援を陳情する方針だ。県は、両町村の年度内支出を前提に、国に補助金を交付申請しており、両町村の説得に懸命だ。
■ 熊川村長「不平等」×県「情報格差広がる」 ■
県情報政策課によると、県内の中継局は、渋川市伊香保町に2005年12月開局した前橋局と06年12月開局の沼田局が稼働中。年度内に、草津など5局の開局が予定されている。設置費用は原則、NHKや民放など各放送事業者が負担する。
だが、群馬テレビは、今年度などに、県内都市部を広くカバーする前橋局とほか2局は負担したが、「それ以外は、経営上の余力がない」とし、株主の県が仲立ちし、総務省の補助事業「地域情報通信基盤整備推進交付金制度」を活用した整備を計画した。
同制度は、整備にかかる費用の3分の1を国が補助する制度。県は、地元市町村と残りの3分の2を負担することで、群馬テレビの負担回避を計画。また、時限制度で、年度内に中継局を開局する必要があるため、県は関係自治体に議会の9月定例会で補正予算案可決するよう求めている。
草津局の場合、群馬テレビ分の総費用は約4000万円。うち町村分負担総額は約1350万円。受信世帯数で割り、草津町850万円、嬬恋村260万円、長野原町240万円とし、草津町は町議会9月定例会で補正予算案を可決した。
熊川村長は「(地上デジタル放送への完全移行という)国の放送行政に伴う影響なのに、山間部の自治体だけが負担するのは不平等の極み。県と国がもっと手当をするべき」と憤る。長野原町幹部も「県には難視聴地域への理解が薄い」と不満を隠さない。
山間地が多い両町村は、難視聴地域が広い。嬬恋村の場合、今回の草津局でカバーできるのは世帯の2割程度。村総務課は「一部世帯分を村が支出したら、ほかの地区からも負担要請が出てくるかもしれない。全世帯分を村事業で行うのは財政上、到底無理」とする。
一方、県は8月、総務省に補助金の交付申請を提出しており、「支出しないとすれば、地域の情報格差が広がり、住民が困るのでないか」と、両町村に疑問を投げかける。都市部との公平性も「群馬テレビの設立時に、当時の11市が出資という形で負担をした」と反論する。群馬テレビは「関係自治体には趣旨と事情を話し、協力をお願いする以外にない」としている。
※ 地上デジタル放送 地上波のUHF帯を使ったデジタル放送で、対応テレビでは、高画質・高音質に加え、双方向番組やデータ放送なども楽しめる。2011年7月にアナログ放送から完全移行する。県内の人口カバー率は87%。