2007年09月14日(金) 08時01分
【法廷から】血税浪費? 服役繰り返す被告(産経新聞)
刑務所に収容された受刑者1人当たりに使われる税金は、いったいいくらになるのか−。2人の男性被告の裁判を東京地裁で傍聴し、ふとそうした疑問がわいてきた。
被告の1人は自転車1台とパンなど計約2万円相当を盗んだとして、窃盗の罪で起訴された。
もう1人はシンナーの常用者。100円ショップで購入したトルエン含有の万能ボンドを吸引したとして、毒劇物取締法違反の罪に問われた。
2人の被告に接点はないが、いくつもの共通点がある。ともに無職で43歳。2人とも、20代の時から服役しては同じ罪で服役を繰り返してきた。刑期満了からわずか数カ月で再び同じ罪を犯したこともあった。
「絶対にもうしません」「ちゃんと定職に就いて親や周りの人を悲しませたくない」。2人は涙ながらに被告人質問でこう述べたが、なんだか空々しくも聞こえた。
法務省矯正局によると、刑務所で受刑者1人当たりにかかる費用は1日平均約1310円。内訳は食費、服代、医療費など。平成19年度の国家予算は約500億円だ。
また裁判での国選弁護人への報酬なども発生する。日本司法支援センター(東京)によると、地裁における軽犯罪の弁護は1回につき平均約7万円。被告に支払い能力がなければ国が負担する。19年度の国家予算は約100億円という。
2人の共通点は、実はまだある。
「自分の意志が弱いから」。被告人質問で犯行動機を追及され、発した言葉も全く同じだった。
窃盗罪の被告は懲役2年6月、もう1人の被告には懲役1年が求刑された。2人とも「もう二度としません」と誓ったが、果たして…。
ただ、弱さを自覚する彼らを叱咤(しった)するだけでは問題の解決にはならない。厳しくも温かく見守る社会の支援も必要だろう。再犯防止が、むなしい血税の浪費にも歯止めをかけるのだから。
(西尾美穂子)
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