インド洋における海上自衛隊の補給活動に絡んで、日本が提供する高品質な燃料が必要とされてきたパキスタン海軍の艦船が、実際には米国など他国が提供する燃料でも活動できる可能性が高いことが分かった。日本政府や米国側の説明と矛盾するうえ、海自派遣の根拠の一つが崩れることになるだけに、政府・与党が現在検討している新法の議論にも影響が出そうだ。
吉川栄治・海上幕僚長は11日の記者会見で、日本の燃料でなければパキスタンの艦船が動かないかどうかについて、「それは(動かないことは)ないと思う」と否定。米国など日本以外の参加国による補給の代替も「基本的には可能だ」と語った。
吉川氏は海自が提供する燃料の品質について「(海自の補給艦は)燃料清浄器を回して非常にクリアな油を提供するよう心がけている」と述べ、上質であることを強調したが、燃料清浄器は「普通であれば(他国の補給艦も)つけている」とも話した。パキスタン海軍は英国製のガスタービン艦を保有している。
防衛閣僚経験者の一人は、米国が日本に給油を求める理由について「無料で配っていること、(イスラム国家の)パキスタンが米国から給油を受けるとパキスタンの国内世論がもたないからだ」と説明している。
シーファー米駐日大使は先月3日、朝日新聞などの取材に対し、「パキスタン海軍の駆逐艦は高品質な油が必要だ。日本が参加しなければ、米国だけでなく、パキスタンが活動を続けられるかということに影響を与える」と語り、日本に補給活動を継続するよう強く求めた。
外務省の谷内正太郎事務次官も今月10日の記者会見で「パキスタン海軍の船は、自動車で言えばハイオクを使わなければいけない艦艇で、これを提供するのは自衛隊の補給艦しかない状況だ。それが使えなくなると、(パキスタンは)行動が難しくなる」と述べた。
http://www.asahi.com/politics/update/0911/TKY200709110520.html