2007年09月12日(水) 17時52分
止まらない原油価格高騰、石油会社に上方修正期待(ロイター)
[東京 12日 ロイター] 原油価格の高騰が止まらない。石油輸出国機構(OPEC)が11日の定例総会で増産を決めたものの、引き上げ幅が限定的だったために原油先物価格は上伸し、終値で最高値を更新した。産業界では原料高などコストアップ要因になると懸念される中、石油会社にとっては上方修正を期待させるとの見方が広がっている。
11日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物相場は、米国産標準油種のWTI10月物が前日終値比0.74ドル高の1バレル=78.23ドルで引け、中心限月の終値としては7月31日につけた史上最高値78.21ドルを約1カ月ぶりに更新した。
ウィーンで開かれていたOPEC定例総会は、イラクとアンゴラを除く10カ国の実質生産量を11月から日量50万バレル引き上げることを決めた。しかし、マーケットでは「これまでのヤミ増産が70万─100万バレルあったと推定されることから、それを追認しただけの形となり、今回の決定が実質的な供給増にはつながらない」(かざかコモディティ・主席アナリストの鈴木孝二氏)といった指摘が出ており、原油価格は先高観に一段と包まれている。
米国のサブプライム(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題により、金融市場ではリスク資産から逃避する動きが出ているが「原油市場に関しては、需給ひっ迫感を背景にマネーを安心して誘える状況となっているなど、流動性相場が崩れる雰囲気ではない」(商品先物関係者)との声もある。ハリケーンに対するリスクや、これから石油製品の需要期に入る季節要因もあるなど、環境、マネーの両面から原油市場は強気に支配されている状況だ。
そうした中、株式市場では石油株が買いを集めた。安倍首相の辞意表明という不透明材料が浮上する中でも、新日本石油<5001.T>、国際石油開発帝石ホールディングス<1605.T>などが総じてしっかり。原油価格の上昇が、業績上方修正要因になるとの期待が広がったのがその背景となっている。
元売会社については、精製を行う際のコストアップに製品価格の転嫁が追いつかないリスクが懸念されるものの「期初の安値在庫を原価に含めることで生じる在庫評価益による利益アップが見込まれる」(準大手証券情報担当者)といった声もあった。そのため「原油価格の上昇が収益に直結する開発事業会社、元売会社のいずれも上方修正が期待できる」(岡三証券・アナリストの宮本好久氏)という。
宮本氏は「開発専業の国際帝石はもちろん、大手元売でも開発事業を手掛けているところは原油高はプラス材料。5月に新たにメキシコ湾での権益を取得した新日本石油なども注目できる」と指摘する。
この点について新日本石油では「在庫評価を考えない前提で、石油開発事業の利益は国内での精製事業で、ほぼ相殺される。冬場に灯油が売れる状況になるなど、これから始まる需要期の価格動向が業績を占うカギになる」と明かす。元売会社にとっては、精製事業のコストアップをどれだけ製品価格の上昇で補えるかが業績のポイントになりそうだ。
(ロイター日本語ニュース 水野文也)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070912-00000507-reu-bus_all