ロシアのプーチン大統領は12日、フラトコフ首相の辞任願いを受けて、内閣総辞職の大統領令に署名した。その後、後任の首相候補に連邦財務監督局のビクトル・ズブコフ局長(65)を指名し、下院に提案した。プーチン大統領のサンクトペテルブルク市勤務時代の部下だが、ほぼ無名の存在。大方の予想を覆す人事の真意を巡り、憶測が飛び交っている。
ズブコフ氏=ロイター
インタファクス通信によると、この日クレムリンでフラトコフ首相から辞意を伝えられたプーチン大統領は「ロシアでは下院選と大統領選が控えている。それに応じた態勢をつくり、大統領選後に備えるために権力と統治のあり方について考えなければならない」と述べ、「ポスト・プーチン」を考慮した人事を行う考えを表明した。大統領が首相に辞任を求めたのが実態と見られる。
グリズロフ下院議長は同日夕、大統領から新首相候補としてズブコフ氏が指名されたことを明らかにした。与党・統一ロシアが多数を占める下院本会議で、14日に正式に承認される見通しだ。
ロシアでは12月の下院選、来年3月の大統領選に向けて、プーチン大統領の後継候補が近く首相に指名されるとの見方が強まっていた。12日付のロシア紙ベドモスチは大統領府筋の話として、大統領最側近のイワノフ第1副首相が近く首相に指名されるとの観測を伝えていた。
このため、まず内閣総辞職のニュースが伝えられると、関係者らは一斉に「大統領がついに後継者を決めた」「おそらくイワノフ氏が首相に指名される」との見通しを示した。しかし、後任首相候補に指名されたズブコフ氏は、後継候補として名前が挙がったこともない人物だった。
ズブコフ氏は、サンクトペテルブルク市でプーチン氏が対外関係委員会議長を務めていた際の副議長。当時プーチン氏に別荘を世話したとの話もとりざたされている。
政治評論家のマカルキン氏は朝日新聞に対し、「経歴から見てもズブコフ氏が、プーチン大統領から個人的に全幅の信頼を寄せられていることは間違いない。選挙が続く困難な時期に政府を任せられる人物なのだろう。来年3月の大統領選後も首相を続ける可能性がある」と指摘。プーチン路線の継続の保証人として側近を首相に選んだ可能性を指摘した。
プーチン氏の後継候補としてはこれまでイワノフ氏のほか、メドべージェフ第1副首相らの名前がとりざたされている。
フラトコフ氏は04年3月、プーチン大統領が解任したカシヤノフ前首相の後継として首相に指名された。政治的野心には乏しく、後継指名までの「つなぎ」と見る向きが多かった。
http://www.asahi.com/international/update/0912/TKY200709120375.html