大阪市中央区の上田潤二郎弁護士(78)の法律事務所で事務員の木内正子さん(68)が殺害された事件で、事務所内では上田弁護士の机が主に荒らされ、現金が収められていた木内さんの机や金庫などはほとんど手つかずだったことが大阪府警の調べで分かった。事務所前の路上に血液反応があり、西方向に数十メートル進んだ先で途切れていたことも判明。府警は犯人が車などを使った可能性もあるとみて調べている。
捜査1課の調べでは、事務所内の木内さんの机の引き出しには現金3万数千円が入っていた。しかし、引き出しは閉めきったままで、物色した様子はなかった。木内さんのバッグの中にあった財布には、現金1万数千円が入ったままだった。事務所内の金庫やロッカーもこじ開けられた形跡がなかったという。
一方、上田弁護士の机には、弁護士業務に必要な書類が収められていたが、引き出しが開いた状態で、机の上には書類なども散乱していた。このため、府警は裁判資料が奪われた可能性もあるとみて、確認作業を進めている。
木内さんは10日午前9時半ごろに出勤し、1人で事務をしていた。上田弁護士が正午ごろに出先から電話した時にはだれも出なかったといい、午前中に殺害された可能性が高いという。
木内さんは事務所内の玄関そばで頭部から多量の血を流して倒れていた。壁や床に広範囲に血痕が残されており、犯人は相当の返り血を浴びた可能性が高い。床が水でぬれており、府警は犯人が木内さんを襲撃後、事務所の洗面所などで衣服などに付着した血痕などを洗い流した可能性もあるとみている。
血液反応は事務所の玄関付近から西向きに数十メートル進んだところで途切れていた。府警は何者かがあらかじめ近くに止めておいた車などで逃げた可能性もあるとみて調べを進めている。
上田弁護士は大阪府能勢町のごみ焼却施設「豊能郡美化センター」のダイオキシン汚染をめぐる公害調停で、施設を管理していた企業側の代理人を務めたほか、最近では離婚や相続など民事事件を主に手がけていたという。
上田弁護士は「仕事をめぐるトラブルは特にない」と10日夜話していた。上田弁護士の実兄(84)は新聞で事件を知り11日午前、現場の事務所にかけつけた。「弟は民事事件ばかりを手がけて刑事事件をやっていない。こんな事件が起きるとは、信じられない」と話していた。
http://www.asahi.com/national/update/0911/OSK200709110027.html