米アップルは、世界各国で今月発売する携帯音楽プレーヤーの新機種「iPod touch(タッチ)」にネット接続機能をつけ、顧客の掘り起こしを狙う。日本市場では、来年投入する携帯電話「iPhone(アイフォン)」にユーザーを取り込む布石でもある。日本の携帯プレーヤーメーカーは、オーディオ機器との連係強化などで迎え撃つ構えだ。
スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は5日の新商品発表会で「信じられない」「すばらしい」を連発。iPod新商品群の革新性を強調した。「タッチ」は、パソコンのマックOSを改良して搭載。画面操作も滑らかだ。
ネット接続機能を加えたことで、これまで音楽や映像の視聴をしなかった人たちにもアピールできる。例えば無線LANが使える場所に限られる制約はあるものの、小型パソコンを使うビジネスマンら利用者の開拓が期待できる。
日本では、携帯音楽プレーヤーの「需要が一巡した」(調査会社BCN)ことから、今年に入り販売台数の前年割れ基調が続く。さらに欧米で8割ものシェアを誇るiPodも、日本ではソニーなどの追い上げに遭い、シェアは5割から伸ばせていない。
iPodマーケティング担当シニアディレクターのスタン・イング氏は、朝日新聞のインタビューに対し、「成長を加速させたい。未来に可能性を持つ新商品投入だ」と力を込める。
日本では若年層を中心に音楽や映像の視聴やメール、サイト閲覧に携帯電話を使う「ケータイ文化」が根付く。アップルは08年に、iPod機能付き携帯「iフォン」を日本などアジアでも発売する予定。今回の新機種投入は、その前に携帯利用者を取り込む布石の意味もありそうだ。
●国内メーカー「脅威にならぬ」
国内では、携帯電話に1曲丸ごとをダウンロードして聴く「着うたフル」が急拡大し、携帯電話で音楽を楽しむ方式が広がっている。米国に比べ音質や機器の操作性が重視されるうえ、CDやMD、ラジオから音楽を取り込む楽しみ方も根強い。このため、iPodタッチの上陸にも、「直ちに脅威になるとは思わない」(メーカー関係者)と強気な受け止め方が目立つ。
日本レコード協会がまとめた1〜6月の有料音楽配信の売り上げ実績は約352億円。うちパソコン向けは伸び悩み、全体の9割を携帯電話向けが占めた。
携帯との連係を重視する国内の機器メーカーは、パソコンを使わずミニコンポなどに音楽をダウンロードできる配信サービスにも力を入れる。
ソニーは、出資先の配信サービス「エニーミュージック」を使い、ネットに接続したハードディスク内蔵のミニコンポを経由して、携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」や音楽再生機能付き携帯電話「ウォークマンケータイ」に音楽をダウンロードしたり、コンポのハードディスクから転送したりできる。
松下電器産業や日本ビクターも、携帯音楽プレーヤーとの連係を強化したミニコンポを発売。音楽をコンポからSDカードや内蔵メモリーに転送して携帯音楽プレーヤーで楽しめるようにしている。
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