株の信用取引をする投資家が、証券会社を通じて株を借りた相手に手数料として支払う「品貸料(しながしりょう)」が不当につり上げられている疑いのあることがわかった。
品貸料を決める証券金融会社の入札で、最大手の「日本証券金融」(東京都中央区)が、入札に参加する証券会社に高めの価格を提示するよう働きかけていたとみられる。
信用取引が個人投資家に広がる中、割高な手数料を支払わされていることになり、証券取引等監視委員会は同社の検査に着手した。
証券金融会社は、金融庁の免許を受けた専門会社で、証券会社に信用取引の決済に必要な株や資金を貸し付ける業務などを行っている。金融当局の検査を受けるのは25年ぶり。日証金と大阪証券金融(大阪市)、中部証券金融(名古屋市)があり、日証金は東京、福岡、札幌、ジャスダックの4証券取引所を担当している。
信用取引で、特定の株の売り注文が集中し、貸し出す株が不足した場合、証券金融会社は証券会社を介して株を持っている法人などから借り入れている。「品貸料」はこの際、株を貸した法人などに支払われるもので、信用取引をする投資家が売買手数料などに上乗せする形で負担する。
品貸料の入札では、証券会社は、株価(貸借値段)が500円以下の場合は1株あたり50銭超〜1円50銭などと、決められた範囲内で価格を提示。証券金融会社は不足している株がそろうまで安い価格から順番に落札し、信用取引を行う投資家を抱える証券会社に貸し出す仕組みになっている。
関係者によると、日証金は一部の入札で、証券会社に提示してほしい価格を伝え、証券会社側も応じていたという。品貸料が高くなれば信用取引をする投資家の負担が膨らむため、監視委ではつり上げが裏付けられれば、投資家保護の点で問題があるとして、日証金に対し証券取引法の業務改善命令を出すとみられる。
品貸料が上がると、株を保有する法人などが株を貸して利益を得ようとして、貸株の増加が期待できる。証券金融会社が株を調達できないと、信用取引の新たな売り注文を受け付けられなくなるため、監視委は、取引が滞る事態を避けるため、日証金が価格操作をしたとみている模様だ。
日証金が2006年度に取り扱った品貸料は総額71億円。監視委は、つり上げが業界の慣例となっていた可能性もあるとみて、大阪証券金融などほかの2社や証券会社からも事情を聞く。
日証金総務部の話「監視委の検査内容については回答できない」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070906it01.htm?from=top