イラクの軍や警察を中心とする「治安部隊」(ISF)の練度や能力を調べていた米国の独立評価委員会(委員長・ジョーンズ元海兵隊総司令官)の報告書の概要が5日、明らかになった。CNNが6日の公表を前に報じたもので、ISFは今後1年から1年半たっても、米軍など外国の軍隊の助けを借りずに国防や治安維持などの任務を全うすることはできないとしている。警察を管轄する内務省は「機能不全と宗派間対立に陥っている」として、国家警察はいったん解散してゼロから出直した方が良いと提言をしている。
ブッシュ大統領はかねて「イラク(治安部隊)が独り立ちできれば、我々は撤退する」と語っており、この報告書は撤退の見通しが当面は立たないことを示している。
この委員会は今年5月、法に基づいて設立されたもので米軍の退役将官や国防、警察組織の元幹部で構成されている。米上下両院の軍事、外交委員会などに報告する。
イラクの軍隊、特に陸軍について報告書は、「国防力の基礎ができつつあることは明らか」「有志連合軍からの戦闘任務の引き継ぎを拡大していく能力がある」などと前向きに評価している。しかしISF全体としては「連合軍に頼らずに重要な治安責任を全うすることは今後、12〜18カ月の間は無理だ」と結論づけている。
なかでも警察については特に厳しい評価をしている。「(管轄する)内務省の汚職体質と機能不全に活動を阻害されている」「地域によっては、戦う相手であるテロリストや犯罪者、民兵らに、指導力、訓練、武器などの面で劣っている」と深刻な問題点を指摘している。特に国家警察については「機能していない。現状のままでは存続不可能だ」と言い切っている。
これに対して米国防総省のモレル報道官は5日の記者会見で、イラク軍の練度向上について「これは長期プロジェクトだ」としたうえで、「12カ月かかるか、それ以上かかるか分からない。我々は、イラク軍が国境防衛という陸軍の通常の役割を果たせるようになるまでとどまる考えだ」と述べた。警察については「宗派間対立の問題は抱えているが、解散が必要だとは思わない。あきらめるのはまだ早い」との考えを示した。
http://www.asahi.com/international/update/0906/TKY200709060117.html