2007年09月06日(木) 23時04分
<テロ特措法>“期限切れ失効”に2段構え 政府与党(毎日新聞)
政府与党が、10日召集の臨時国会で最大の焦点となるテロ対策特別措置法の延長問題で、調整を本格化させている。これまでのように改正案を提出して「単純延長」を目指すのではなく、11月1日に同法の期限が切れて失効する事態に備え「新法案」提出も併せて検討するという2段構えだ。ただ、参院で野党が過半数を握り、民主党の小沢一郎代表が反対姿勢を貫く中、新法案を提出しても成算はないのが現状。インド洋での自衛隊の補給活動継続は高波にさらされている。【古本陽荘、田所柳子】
■「新法」二つの意味
政府与党内で浮上しているテロ特措法の新法構想には二つの意味がある。高村正彦防衛相が3日の講演で「極端に言えば野党の要求はどんなことでも聞くくらいの覚悟だ」と強調したのにみられるように、野党の要求を取り込んで法案を作り直すという「修正新法」が一つ目。あくまでも補給活動が主たる活動だが、民主党が検討しているアフガニスタンの人道復興支援や、過去に要求した国会の事前承認規定を盛り込む要求にも応じる「柔軟」な構えだ。
だが、同党の小沢代表は自衛隊の活動を含めてテロ掃討作戦が国連安全保障理事会の決議に基づいていないという原則論で反対しており、「民主党を抱き込もうという新法には乗ってはいけない」(民主党幹部)と応じる気配はない。
もう一つは、期限切れ以降も国会審議を続けるための国会対策上の狙いだ。町村信孝外相は5日、訪問先のシドニーで「11月1日を過ぎると法案の審議そのものの意味がなくなってしまう」と指摘した。延長法案の審議中、テロ特措法が失効すれば、延長法案も事実上、廃案になるというのが政府の見方だ。
形式だけでも「新法案」として国会提出しておけば、テロ特措法が失効した11月2日以降も審議継続が可能となる。自衛隊はいったん活動中止に追い込まれるが、法案が成立した場合の再派遣までの時間を最短にすることができる。
■問題は国会承認
参院で法案を否決したり、衆院からの法案送付後60日以内に議決しなかった場合、衆院で3分の2の賛成で再び可決すれば、法案は成立する。しかし、この場合も、自衛隊の再派遣が可能かと言えば、国会承認がハードルとなる。テロ特措法は部隊に派遣命令が出てから20日以内に国会の承認を得るよう求めている。「新法案」にも同様の国会承認規定があれば、参院で承認されない限り、再派遣は不可能だ。
理論的には、新法案から国会承認の規定を省き、「国会報告」に改めるなどすれば再派遣は可能だ。しかし、これでは、文民統制(シビリアンコントロール)をないがしろにするものとの批判は免れない。野党の問責決議案提出の契機となり、かえって国会が混乱することも予想される。
政府内には「どうせ難しいなら、姑息(こそく)な手段と見られる新法案よりも、単純延長法案を出した方がいい」(内閣官房幹部)との声もあり、実際に新法案が提出できるのかは流動的だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070906-00000163-mai-pol