2007年09月06日(木) 19時43分
配達のバイクはまるで「シャアザク」(オーマイニュース)
東京で僕が、広告の写植・版下制作会社の営業のアルバイトをはじめた時のことです。営業といってもクライアント先に、バイクで原稿を受け取りに行ったり、納品物を届けたりする仕事です。
配達に使うバイクは、真っ赤な50ccのカブです。まるで「機動戦士ガンダム」の「赤い彗星シャア」が乗る「ザク(ザク…カブ….ゴロもいいし)」です。私は、その赤カブを「ゴウテン号」と名前をつけて気に入って乗っていました。
私は、言われた時間どうりに来る配達のおにいちゃんと、クライアントに喜ばれるようになったのです。クライアントが、指定した時間にピッタリ着いた時、クライアントから「ピッタリだ! 凄い!」と言われた時は、快感を感じました。
それから、バイクは黒い90ccのリードに替わり、「ゴウテン2号」と名づけ、赤い400ccのCB−Rには「セキトバ(『三国志』に出てくる名馬)」と呼び、走りました。
「赤」は、私の速さと喜びのパワーの象徴の色となっています。私は高校3年のとき、初めて友人の250ccのバイクに乗り、そのエンジン音と風を切る感覚に恍惚感を感じたのでした。バイクという無機質な機械に「こいつは生きているぞ」と、生命のようなモノを感じたのです。
バイクに限らずや小石、植物類など、どんなものにも生命は宿っている、と思うようになったきっかけでもあったのでした。
写植・版下制作会社で、アルバイトを始めて2年たった頃、バイクで配達をするだけでなく、ワープロでの文字打ちを始めるようになりました。
配達の合間に、デザインをするデザイナーと話しをするようになり、ワープロを教えてもらい、遊びで文字打ちをし、ブラインドタッチで打てるようになったのです。ワープロとの出会いで、私は文字を書く、というより打つことが好きになったと思います。
その後、映画監督を目ざし、シナリオ学校でシナリオを勉強し、そこで、改めて書くことを学びました。とにかくたくさんのシナリオを書きました。
完成というものではないのですが、とにかく1度形にすれば、何かが必要になったとき、それを元に書き直したり、または応用出来るだろうと思ったのです。料理でいうと、料理の素材作りといったものです。
中国のある話で、
「ある国の王が『あなたの絵はたいへんすばらしいものだ』と画家の絵を賞賛していると、その画家は『王にはおよびません。あなたは自分の人生をキャンバスにしてたいへんすばらしい絵を描こうとしているのですから』と答えた」
この話は、人にはそれ相応の可能性があるという話で、王は画家の才能をうらやましがるのですが、画家は、
「王は、王でもっと別の才能をもっている、人をうらやましがらないで、自分の可能性を信じてください」
と、言ったのです。
私は、文字を書くことで、自分の創作の範囲が広がったように思います。そして、関係ないと思いっていた事も、範囲が広がっていくことで、新しく繋がっていくということ知りました。
(記者:古野本 聡)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070906-00000007-omn-l13