2007年09月04日(火) 17時32分
419事件 国内被害は5億円 中小企業が標的(毎日新聞)
埼玉県警が摘発した口座詐欺事件の背景に浮かぶ国際詐欺集団による「419事件」の国内被害が、少なくとも5億円に上ることが分かった。世界規模では数十億〜100億ドルの被害が出ているとされるが、日本でも90年前後から被害が目立ち始め、日本貿易振興機構(ジェトロ)には毎月3〜4件の相談が寄せられている。海外の公文書を精巧に偽造するなどしており「海外取引に不慣れな中小企業が被害に遭っている」という。
ジェトロには02〜06年末に196件の相談があり「政変で失脚した元大統領の隠し財産を海外に移すため口座を貸してほしい」とアフリカ諸国の政府高官や関係者をかたるなどの419事件の被害が大半で、総額は把握できただけで約5億円になるという。
英文ホームページなどから手当たり次第に電子メールを送りつけ、返信すると送金許可を得るための「手数料」や「政府関係者へのわいろ」などを要求するのが一般的。IT(情報技術)の進歩に伴い巧妙化し、ビジネスを装う「貿易取引型」や、大量の商品の随意契約を持ちかける「政府調達型」も登場している。
「危うくだまされるところだった」。東京都内の貿易会社社長(74)は今年3月、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)事務局の委託を受けたというガーナの企業から、帽子200万個(約30億円分)の注文がメールで届いた。約30回のメールのやりとりの後、契約寸前に「入札参加費」を要求され不審に思ってジェトロに相談。ガーナ大使館に問い合わせて詐欺と分かった。購入代金を預かっているという英国の大手銀行の偽文書も届き、社長は「正規のビジネスと見分けがつかなかった」と話す。
ジェトロ貿易投資相談センターの児玉高太朗主査は「419事件は『前渡し金』をだまし取るのが狙い。政府や中央銀行のレターヘッドが入った偽造公文書で信用させ、『隠し財産を移す口座を貸すだけだからリスクは低い』と強調するのが常套(じょうとう)手段」と説明。世界規模での被害についても、「明らかになったのは氷山の一角」と指摘する。
埼玉県警が逮捕したナイジェリア人と日本人計6人による詐欺事件では、県内や東京都内の金融機関の38口座に、欧米で起きた419事件とみられる被害金約7億円が振り込まれていた。現金はさらに米国やカナダなどに送金されており、県警はマネーロンダリング(資金洗浄)に使われたとみて、送金先や背後関係を捜査している。【浅野翔太郎、小泉大士】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070904-00000024-maip-soci