中部空港(愛知県常滑市)でトイレに施されたちょっとした工夫が、「サービス世界一」の評価につながる大きな効果を上げている。男性用の小便器に張られた直径3センチほどの「こぼれ防止シール」。的を狙いたくなる人間心理の特性を応用したもので、公衆トイレにありがちな便器外へのこぼれが大幅に減った。美化効果をより高める新しい「的」の開発も進む。
小便器内のこぼれ防止シール=愛知県常滑市の中部空港旅客ターミナルビルで
新しいシールの試作品
家族連れでにぎわう夏休み期間中、1日の利用者は約5万人。旅客ターミナルビル内のトイレ約50カ所は「フル稼働状態」(中部空港会社)だった。作業にあたる委託の清掃員も1日延べ約100人を数える。
その一人が「これのお陰」と指さす小便器内に張られているのは、炎やゴルフのカップをあしらった小さなシール。昨年6月、15万円の予算で500枚を印刷。旅客が利用するすべての男子トイレの便器に張られた。
きっかけは、清掃などを受け持つ空港施設サービス会社の職員のアイデア。開港した05年、旅行先のスキポール空港(オランダ)や仁川空港(韓国)のトイレで、ハエなどをあしらったシールに気づいた。帰国後、「ターゲットがあると、きれいなトイレになる」と提案した。
「目に見えて、飛び散りの量が減った」「掃除の負担も」。ほとんどの清掃員が、その効果を認めているという。
仕掛け付きのシールも開発中だ。跳び箱や三角形を組み合わせたような抽象的なデザインで、的に小便が当たると色が黒から赤へ。近くお目見えする。
国際空港評議会の空港サービス調査では、中規模空港(年間旅客数500万〜1500万人)のクラスで、中部空港が2年連続の「世界一」に輝く。特に「トイレの清潔さ」は評価が高い。空港施設サービスの幹部は「現状に満足せず、努力を続けたい」と話している。