「東北なら品薄のWii(ウィー)が手に入る」。台湾、香港からの旅行者の間で、そんなうわさが広まっている。新聞記事の情報がインターネットを通じて広がったらしい。「観光客増につながる」と歓迎する声の一方で、「田舎だから」という説明に複雑な表情を浮かべる商店主もいる。
Wiiの売り場の横には多言語併記の注意書きの掲示が=仙台市青葉区のLABI仙台で
「ツアー客を引き連れた添乗員に、片言の日本語で『この人とこの人にはWii、この人にはPSP(プレイステーション・ポータブル)を』と注文を受けることがある」。そう話すのはJR仙台駅近くの家電量販店の担当者だ。Wiiを買う10人に1人は海外の客だという。別の量販店では店内に免税カウンターを設けて応対している。
任天堂のゲーム機「Wii」は昨年12月に発売以来、世界で累計販売台数1000万台を突破した人気商品だ。アジアでは日本のみで発売されているが、台湾や香港でも大人気。台湾出身の宮城・松島のホテル大観荘の李景莉(りー・けいり)さんによると、アジアからの旅行者の中で「せっかく日本に来たのだからWiiを買って帰ろう」という人は多い。
そんな中で広まっている情報が「日本の田舎を狙え」。台湾の「旅遊新聞」は、秋葉原などでは品薄だが「田舎の電器店では買う人は少ない」と解説。記者が実際に秋田県男鹿市などを訪れ、「10台手に入れた」と報告する記事を載せた。
家電量販店側は「地域的な偏りはない」としているが、仙台市内のゲーム店店長は「予約もできるし、秋葉原などに比べて手に入りやすいのではないか」と話す。
現象の一因に、東北旅行を勧める観光業界の「セールストーク」があるとみる業界関係者もいる。地元では「どんな形であれ東北の名前が出るだけでうれしい」(李さん)という歓迎ムードの一方で、「田舎なんて言わないでくれとも思う」(ゲーム店店長)と戸惑いの声が上がっている。
http://www.asahi.com/national/update/0831/TKY200708310289.html