旅行ツアーの派遣添乗員が社員並みに働きながら、厚生年金保険と健康保険に加入させていない疑いがあるとして、大阪社会保険事務局は27日、添乗員の派遣元の「阪急トラベルサポート」(大阪市北区)に立ち入り調査した。同社は「指導があれば、適切に従う」としている。
同社によると、登録している派遣添乗員は約780人。ツアーごとに契約を結び、親会社の阪急交通社(同)に派遣している。1回の契約期間は最大約30日で、日帰りの場合もあるという。
サポート社に登録する添乗員のうち、正社員の勤務日数の4分の3にあたる200日以上勤務しているのは約50人。だが、厚生年金、健康保険に加入しているケースはないという。同社は「短期の雇用契約であり、継続雇用ではない。9年前に天満社会保険事務所に相談したが、指導はなかった」と説明している。
厚生年金保険法、健康保険法では、2カ月以上勤務し、勤務時間や勤務日数が正社員の4分の3以上の見込みがある場合、企業側に保険への加入を義務づけている。保険料は労使折半で、企業側が国に納める。同事務局は「短期の契約内容であっても、毎月社員並みに勤務する場合は継続雇用と同じ。加入義務が生じる」としている。
JTB(東京)も系列派遣5社について、常用雇用でないとの観点から添乗員を加入させていない。担当者は「今回の調査で、何らかの見直しが必要になるのでは」と困惑する。
添乗員派遣56社が加盟する「日本添乗サービス協会」(東京)によると、派遣添乗員は約1万3千人。ほとんどが個人で国民年金や国民健康保険に加入し、厚生年金や健康保険に入っていないという。鈴木毅事務局長は「全国の社会保険事務所の見解もバラバラ。統一的な指針は出しづらい」と話す。