「鈍感な」は insensitive あるいは unresponsive 。海外特派員を務めた職場の先輩は、 Be clear‐cut if you need to criticize the political system of a foreign country. But at the same time, you should not be insensitive to the patriotic feelings of local people.(外国の政治体制を批判するなら明快に意見を述べよ。だが、同時に現地の人々の愛国心を傷つけることに鈍感であってはならない)と自らの経験を踏まえた例文をひねり出しました。
また、 The government that is unresponsive to changes in public opinion doesn’t survive long.(世論の変化に鈍感な政権は長持ちしない)といった言い方も容易に思いつきます。いずれにせよ、あまり肯定的な響きの言葉ではありませんね。しかし、渡辺淳一氏の近著「鈍感力」(集英社)は、「鈍感はまさしく本来の才能を大きく育(はぐく)み花咲かせる最大の力」と賛美しています。本の表紙には「鈍感力」の英訳として、 The Power of Insensitivity とありますが少し説明を加えてみましょう。「ささいなことに敏感にならず、気にしない能力」というのが私の解釈です。“The power of insensitivity” is an ability not to dwell on every little thing and is a secret to surviving modern society.(「鈍感力」とはささいなことをくよくよと考えこまない能力のことで、現代社会を生き抜く秘けつだ)のように説明できるかもしれません。渡辺氏の本に影響を受けたのか、小泉前首相は以前、低迷する安倍内閣支持率に触れ、中川自民党幹事長、塩崎官房長官を前に次のように“激励”したといいます。「目先のことには鈍感になれ。『鈍感力』が大事だ。支持率は上がったり、下がったりするから、いちいち気にするな」。英訳すると、 Be insensitive about the here and now. It’s important to have “the power of insensitivity.” The support rate rises and falls, so don’t worry about it every single time. 精神的な強さ、ずぶとさを持てということなのでしょうか。職場で受けるしっ責、注意にあれこれ思い悩む人もいるかもしれません。“開き直り”はいただけませんが、引きずらないことも大切なようです。 Don’t sweat the small stuff.(小さいことにくよくよするな)、 Tomorrow is another day.(明日は明日の風が吹く)。こんな心強い表現も覚えておくといいですね。(桜井陽介記者)
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