警視庁立川署の友野秀和巡査長(40)が飲食店従業員の佐藤陽子さん(32)を射殺した後に自殺したとみられる事件で、友野巡査長が勤務中に失跡した事実が交番から同署に伝わった後、同署の署長に報告されるまでに1時間以上もかかっていたことがわかった。
友野巡査長の「飲食店通い」を、同署の管理職が全く把握していなかったことも判明。「友野巡査長のストーカー行為を、佐藤さんが別の警察官に相談していた」との証言もあることから、同署の危機対応や人事管理の不備とともに、同僚や上司が“異変”を甘くとらえていたという問題も浮上している。
同庁の調べによると、友野巡査長は20日午後9時半ごろ、苦情処理のため、勤務先の東京・国立市の富士見台交番をバイクで出発した後、同交番の同僚の巡査と連絡が取れなくなった。
同10時半ごろには、上司の同署地域課係長が、巡視のため同交番を訪問。この巡査から「友野巡査長が出掛けたまま戻らない」との報告を受けたにもかかわらず、「パトロールにでも行っているのだろう」と思い込み、何も対応を取らずに引き揚げていた。
結局、この巡査が、立川署の当直責任者に「巡査長が戻らない」と連絡したのは、失跡から7時間半後の翌21日午前5時ごろ。この時も当直責任者は無線を使って呼びかけるなどしただけで、約1時間後の同6時10分ごろになってようやく署長や副署長に報告。捜査員を大量動員した捜索を始めたのは、その後だった。
警視庁では、交番勤務員が2時間を超えてパトロールを続ける場合、1時間おきに無線などで連絡するよう内規で定めており、友野巡査長の内規違反を、上司の地域課係長が見過ごしていた疑いが強い。
一方、友野巡査長は、佐藤さんが勤務していたJR立川駅近くの飲食店に週3、4回は通い、その度に佐藤さんを指名していた。
この話は同僚の間では有名で、事件後、「友野巡査長が佐藤さんに思いを寄せていた」と語る同僚までいた。しかし、所属する地域課の幹部による勤務評定は「まじめで、仕事が終わればすぐに帰宅する」という内容で、頻繁な飲食店通いもつかめていなかった。
友野巡査長のクレジットカードの未払い分は現在も約40万〜50万円残っており、地域課の係長との半年に1回の面接でも、こうした事実を把握できなかった。このため同庁は22日から、「勤務管理に問題がある」として同署に異例の特別監察に入っている。