1997年から続くポケモンスタンプラリーはJR東日本東京支社が主催。まず、駅にある台紙に6駅分のスタンプを集めて新宿、上野などのゴール駅に提出すると、パスケースとサンバイザーに交換できる(引き換えは12日で終了)。
この際、さらに95駅分を押せるスタンプ帳が渡される。全部集めるには山手線の各駅はもちろん熊谷、牛久、八王子、大船といった郊外の駅に行く必要がある。スタンプ台は改札の外にあり、参加者のほとんどがホリデー・パス(大人2300円、子供1150円)などのフリーきっぷを駆使してスタンプ獲得に汗を流している。
「スタンプ台の設置は午前9時半−午後4時までなので、全駅制覇にはどんなに早く回っても2日はかかると思う」(JR関係者)といい、猛暑も勘案すると、かなりハードな行程だ。全駅制覇のスタンプ帳を400円分の定額小為替と一緒にJRへ送ると、もれなくポケモンの置き時計がもらえる。JR東日本によると例年、約30万人が参加しているという。
そんな人気イベントに異変が生じている。「成人男性が20冊近くもスタンプ帳を持っていた。たくさん親子連れが並んでいるのに、時間がかかってすごく迷惑。“鉄”(鉄道ファン)ではなさそうな風体だった」と不満を漏らすのは、小学2年の息子と回る40代の父親。6歳の息子とラリーに参加していた鎌倉市の主婦(34)も「10冊近く持っている親子がいた。やたら丁寧に押すので怪しい」と語る。
「丁寧」なのは、商品にするため。ネットオークション最大手、ヤフーオークションでは95駅制覇のスタンプ帳が2000円前後で複数出品されている。落札段階で値段はつり上がり、8740円の高値で落札されたケースもあった。平均落札額は約4000円で、電車代のコストを引いても転売利益は出る。
ポケモングッズに詳しい経済アナリスト、森永卓郎氏は「置き時計に、ものすごい価値があるわけではない。ポケモングッズ自体、何万円もの値段が付くものではなく、コレクターの大人もそれほど多くはない」と解説する。そのうえで「地方の子が欲しがって(親がオークションで)買うのかもしれない。ただ、大人がまとめて(ラリーを)やるのはいかがなものか」と苦言を呈する。
主催のJR東日本東京支社も「子供の鉄道ファンを増やそうという意味合いでやっている。お子さんが一生懸命回って手に入れるものなので、転売は想定外」(広報課)と驚いた様子。「転売の事実が確認できれば、今後、対策を検討する可能性がある」といい、“大きいお友達”の悪さも今年限りとなりそうだ。
ZAKZAK 2007/08/20