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2007年08月14日(火) 21時56分

「トトロの林」がピンチ 公有地化進まず 東京・東村山朝日新聞

 アニメ映画監督の宮崎駿さんらが東京に残った川べりの雑木林を守ろうと進めてきた運動が、窮地に立っている。宮崎監督らの2000万円を超す募金を受け、東京都東村山市は公有地とすることを決めたが開発業者と価格が折り合わず、すべての土地の買い取りが難しくなった。一方、宮崎監督らが12日開いた緊急集会では、あくまでも全土地の取得を求めていくことを確認しており、八方ふさがりの状態だ。

 この雑木林は、埼玉県の狭山湖を水源に東京・埼玉県境を流れる1級河川・柳瀬川の両岸にまたがる。住宅地に囲まれながら、10メートルほどのケヤキやクヌギ、コナラが茂るのどかな場所だ。30年来近くに住む宮崎監督の散策コースで、子どもの頃の豊かな緑を思い出し、アニメ「となりのトトロ」の想を練ったという。

 11年前にも開発計画があり、宮崎監督らの約3億円の寄付を受けて東村山市と埼玉県所沢市が約4600平方メートルを公有地化。「淵(ふち)の森緑地」として市民たちが手入れや掃除をしてきた。

 今回はその対岸約1500平方メートルの宅地化計画に対し3月から募金運動が進められ、6月に東村山市の渡部尚市長が公有地化を表明した。

 この間、地権者は5月に開発業者に土地を売り、手付金を受け取った。市は、9月の残金支払いを前に業者と交渉を始めたが、業者側は約1億3000万円を要求。市側の予定とは倍以上の開きがあるという。

 12日の緊急集会は岸辺の雑木林で開かれ、今後も自然の保全を求めて市側へ働きかけていくことを確認した。すべての土地を取得できなければ、寄付金が宙に浮く事態にもなる。16日には宮崎監督と渡部市長との会談も予定されている。

 宮崎監督は「開発で道路ができれば、もろい自然護岸の崩壊が心配。子どもたちのためにもこの緑をぜひ残していきたい」と話している。

http://www.asahi.com/national/update/0814/TKY200708140350.html