【ニューヨーク=白川義和】国連イラク支援団(UNAMI)の任務を拡大する国連安全保障理事会の決議案が10日、全会一致で採択され、要員が近く増やされる見通しとなった。
イラク政策が手詰まりの米国は、将来の駐留米軍撤退も視野に国連の関与増大に期待するが、現在の治安状況で効果的な活動は難しい。
国民融和、近隣諸国との対話、難民帰還、経済改革、人権保護、司法改革……。決議に盛られた国連が貢献を求められる分野には、米国がイラクのマリキ政権に対応を促しながら、一向に進展しない課題がずらりと並ぶ。しかも、国連が助言や支援を行えるのは、「(現地の)状況が許せば」「イラク政府の求めに応じて」との条件付きだ。
国連職員の間には、2003年8月に起きたバグダッド現地本部爆破テロの忌まわしい記憶が残る。国連はUNAMIの国際要員の上限を65人から95人に増やす予定だが、バグダッドの多国籍軍管理区域(グリーンゾーン)内にある事務所の安全強化が前提となる。
UNAMIのサイド・アリカット報道官は本紙の電話取材に「グリーンゾーンの外に出る時は、多国籍軍の護衛付き。動き回っての任務遂行は難しく、事務所内での仕事が多い」と明かした。一般のイラク人は国連を米国の同盟者とは見ていないが、サダム・フセイン時代に受けた安保理制裁の記憶から、良いイメージは持っていないという。
一方、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は決議採択後、記者団に、「国連は困難な人々がいる所には、世界のどこであっても支援を続けねばならない」との決意を示した。決議を推進したハリルザド米国連大使は「イラクでの国連の役割は重要な新段階に入った」と述べた。
潘事務総長は近く、イラク担当のアシュラフ・カジ事務総長特別代表の後任を任命する予定。新代表がイラク各層や周辺諸国の指導者と対話を深められるかどうかが当面の焦点となる。
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