水産大手「マルハグループ本社」の子会社「北州食品」(東京都中央区)が、業務用として販売したマグロの加工食品に、賞味期限切れのマグロたたきを混ぜて出荷していた問題で、筒井明彦社長が今年1月、社員から混入の事実について報告を受けながら、出荷を黙認していたことがわかった。
問題の商品は3月まで出荷され、同社が6月に自主回収を始めた時には、すでに大半が消費されていた。事態を重く見た水産庁では、品質管理の徹底を求める通知を業界団体に出した。
北州食品によると、今年1月中旬、同社の品質管理部長(当時)が宮城県の仙台工場を点検中、従業員が、昨年7月に賞味期限の切れたタイ産冷凍品「鮪(まぐろ)タタキ」を、原料の一部として使っているのを見つけた。品質管理部長は、この事実をすぐに本社に報告し、筒井社長にも伝えられた。
筒井社長は混入をやめるよう指示したものの、「製品検査に合格しており、(消費者に)健康被害が発生するわけではない」との判断から、在庫として保管されていた商品の出荷停止や、取引先への説明などの対応はとらなかった。このため、賞味期限切れの原料が混ざった商品の出荷は3月まで続き、すし店やスーパーなどでネギトロ巻きや総菜として販売された。
同社が自主回収の方針を決めて、同県に報告したのは6月中旬。31社に販売したマグロ8トン余が回収対象になったが、ほとんどが販売された後で、回収できたのは約5キロだけだった。
同社の対応の遅さについては、取引業者からも批判が出ている。問題発覚後、北州食品からの仕入れを打ち切った業者の幹部は、「北州側から説明を受けるより前に、期限切れマグロの混入のうわさを聞いた」と明かし、「混入以上に、隠ぺいするような企業姿勢に疑問を感じた」と説明する。
一方、北州食品はホームページ上に「事態を認識してからの対応に時間がかかった点について、社長として大いに反省しております」という社長の見解を掲載。6月になって回収を始めた理由については、「4月にマルハ品質保証グループから出向した品質責任者の意見を入れた」などと釈明している。
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