2007年07月10日(火) 03時03分
<年金問題>20年前の不明記録862万件 有効対策とらず(毎日新聞)
年金記録漏れ問題で、社会保険庁のオンラインシステムが本格稼働した87年までに、納付者の分からない厚生年金の不明記録が総計862万件に上ったことが分かった。同庁は各社会保険事務所に「事故リスト」を送付したが相当数が確認できず、そのまま送り返されたり放置されたという。同庁は同年まで133回にわたって統合作業を重ねていたが不明記録は年々増加。大量の不明記録を把握しながら有効な対策をとらなかったことが、5000万件の記録漏れにつながったとみられる。
社保庁の内部資料などによると、厚生年金保険は1942年に導入され、同庁は62年から年金記録の磁気テープへの入力を開始した。加入者の転職・再就職の届け出があったり、5〜8年で被保険者原票の記入欄が標準報酬額の記載で埋まると、社会保険事務所から本庁に原票が送られた。同庁は63年から、原票と磁気テープを突き合わせ、記録を追加・修正する作業を始めた。この際、結び付けるべき年金番号が見つからない、氏名や生年月日、入社日が合わないなどで、持ち主の分からない記録がコンピューター上ではじかれた。
厚生年金の不明記録は、63年9月の1回目の統合作業だけで22万件が見つかり、その後も毎年2万2000〜85万7000件が発覚。133回目の統合作業が完了した87年3月までに不明記録は総計862万件にまで膨らんだ。同庁は、このうち何件が補正され、納付者が確定したかは把握できていないという。
同庁は随時、事故リストとして、原因を調べて修正するよう社保事務所に指示した。だが、80年代に関東地方の社保事務所に勤めた職員は「企業が既になくなったり、元の届けが読みづらいなどの理由で調べきれずに、『調査不能』として本庁に送り返すものが相当あった」と証言する。事務所に放置されたものも少なくなかったという。
同庁は、不明記録が93万件となった64年9月、社保事務所や自治体などに確認の徹底など注意を促す通知をした。しかし、基礎年金番号を導入した97年には厚生年金と国民年金の年金番号は約3億件に増えた。このうち厚生年金約4000万件、国民年金約1000万件は納付者が分からなくなっている。
元職員は「事故リストの修正は一件一件確認に時間がかかった。宙に浮いた記録の『原形』であり、修正が徹底されていれば減っていたかもしれない。組織の構造的問題だった」と話している。【野倉恵】
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