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2007年07月07日(土) 03時28分

<児童虐待>ブラジル籍児の母逮捕 実態不明な外国人ケース毎日新聞

 5月、静岡県掛川市内の駐輪場で、9歳のブラジル国籍の男児が保護された。背中には虐待を受けた痛々しい傷跡があった。県警掛川署は日系ブラジル人3世の母親(26)を傷害容疑で逮捕したが、海外から出稼ぎに来た一家の日本での足跡をたどると、学校現場や児童相談所の外に置かれた外国籍の子供の実態が浮かび上がった。【望月和美】
 男児は5月22日夕、駐輪場で一人うずくまっているところを近所の主婦が見つけた。声をかけたが家の場所を言おうとせず、同署に迷子として保護された。シャツをめくると、背中には電気の延長コードを丸めて殴られた跡がうろこ状についていた。それ以外にも黒いあざがあり、全治1カ月の重傷だった。その夜、同署は「しつけだった」と話す派遣工の母親を傷害容疑で逮捕。母親は6月16日に傷害罪で起訴された。男児は児童養護施設に預けられた。
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 男児はブラジルで生まれ、00年に両親と来日。父親と一時帰国したが、05年12月に母親に連れ戻され、06年4月に掛川市内の小学校に入学した。
 当時から、顔に殴られたような手の跡をつけて登校。不審に思った教諭がシャツをぬがせてみると体中にあざがあった。教諭は6月に市職員、児相職員と2度家庭訪問したが、母親は「しつけ」の一点張り。9月に滋賀県に引っ越すと連絡があり、「転居先の学校は決まっていない」と言われて、学校は転校ではなく退学手続きを取った。
 当時の校長は「外国籍の子供は義務教育ではないので」と退学にした理由を説明。「外国人学校に通う場合もあるから」と話した。
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 男児は母親の他、内縁の夫とその子供と暮らしていた。一家は滋賀、石川、長野と、職を求めて転々とし、06年11月に再び掛川市内に戻った。男児は別の小学校に入ったが、教師は虐待には全く気付かなかったと話す。
 3カ月後には「ブラジル人学校に通わせる」と同校も退学。だが、実際にはブラジル人学校には通わせず、男児は不就学に。周囲に虐待の兆しを発見できる人もいなくなり、男児を救う道はぷっつりと途絶え、事件という形で表面化した。
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 同市を管轄する県西部児相によると、転居に伴う情報の引き継ぎは学校間でやりとりされ、転校先の学校から次の管轄の児相に連絡されるのが一般的。しかし「退学」の場合は児相が転居先を把握しない限り、虐待歴は次の管轄の児相に引き継がれず、引き継がれても新たな学校を特定するのは難しい。
 転居先が分からなくなった場合は全国の児相に虐待家庭の情報を一斉に流すが「それだけでどこに暮らしているか特定できるケースはほとんどない」(同児相)のが実情だ。
 警察庁や厚生労働省の統計でも、外国籍児童の虐待被害を知ることができる数字はない。東京都は00年から児童か親のどちらかが外国人である児相への相談を「外国人ケース」としてまとめているが、虐待事案は05年には213件に達している。
 ▽大阪府で外国人女性や子供の家庭内暴力(DV)の被害者の支援を続ける団体「くろーばー」の尾上晧美事務局長の話 外国人のDVも、役所などが多言語で相談窓口の存在を広報するようになってから表面に出てきた。出稼ぎで来日した外国人の場合は引っ越しなどで周囲が気付きにくいという面があり、被害は潜在化している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070707-00000020-mai-soci