談合やカルテルへのにらみがさらに利くことになろう。
独占禁止法の見直しを検討していた官房長官の私的懇談会が、最終報告書をまとめた。
昨年1月施行の改正独禁法が打ち出した厳罰化を引き継ぎ、きめ細かく罰則の強化を求めている。
自民党や経済界には抵抗感があるようだが、談合の完全追放には、罰則強化が効果的なことは既に明らかだ。
今後の独禁法再改正作業に当たって、政府・与党はこの報告書を基軸にして取り組むべきである。
ここ1年余の間に、大型談合の摘発が相次いだ。緑資源機構の林道整備、名古屋市の地下鉄工事や国土交通省発注の水門工事などを巡る談合だ。いずれも改正独禁法がもたらした成果とされる。
課徴金の額を大幅に引き上げる一方、談合を自主的に申告した企業には、課徴金が減免される制度を導入した。捜査令状に基づく強制調査権限も公取委に与えた。このおかげで、以前ならば摘発が難しかった事件にメスが入った。
今回の報告書の内容は、前回の大改正に比べればかなり小粒だ。だが、談合などを続けている企業が、足を洗いたくなるような厳しい点を含んでいる。
例えば、違反企業に対する課徴金を割り増すケースの拡大だ。従来は違反を繰り返した場合だけだったが、新たに違反を主導した場合も加える。
違反行為の時効は現在3年だが、米国の5年、欧州連合(EU)の最大10年などを参考に、国際的な水準まで期間を拡大することも提案している。
不当な安売りで新規参入を妨げるといった「排除型の私的独占」は、これまで課徴金の対象外だったが、対象に加えることも盛り込んだ。
消費者にとって短期的にはマイナスになっても、健全な競争を促すことで長期的には利益になる、との判断からだ。
課徴金の額について報告書は、EUに比べてまだ低いと指摘したが、さらに引き上げるかどうかについては、明確な判断を避けた。前回の大幅引き上げで、違反の抑止効果はかなり高まっている。当面は、様子を見てはどうか。
行政処分への不服申し立てを、地裁に代わってまず公取委が裁く審判制度の在り方については、現状に注文を付けた。審判制度そのものは公取委内に残すものの、審判官に外部からの人材を増やすなどの工夫が必要だとしている。
現在7人の審判官のうち、4人が法曹資格者で、3人は公取委の職員だ。この際、全員を法曹資格者とすることを検討してもいいのではないか。