パキスタンの首都イスラマバード中心部のモスク(イスラム礼拝所)に併設された神学校で治安部隊と武装学生が衝突した事件で、ロイター通信は5日夜、治安部隊が外壁を壊して突入の構えを見せ始めたと報じた。民放テレビは建物から大量の煙があがる様子を放映し、モスクの報道担当者の話として「男女合わせて学生25人が死亡した」と伝えた。内部には約1000人がおり、指導者が投降する意向を示しているとの情報もある。
民放テレビの映像によると、モスクと神学校がある敷地を包囲している治安部隊は5日午後5時(日本時間同9時)ごろから神学校の建物を狙って集中的に発砲。数時間後には建物の一部から黒煙が上がった。
神学校を運営するのは宗教指導者のアブドゥル・アジズ師とガジ師兄弟で、イスラム原理主義タリバーンとのつながりが深いとされる。
治安当局は4日夜、女性用の外衣を着てモスクから逃走を試みたアジズ師を逮捕。ガジ師は学生と一緒に立てこもっているが、ロイター通信は5日夜、ガジ師が地元テレビに電話で投降する意向を示したと伝えた。
これに先立ち、タリク副情報相は5日午後の記者会見で、これまでに1146人の学生が投降したものの「まだ約1000人の学生が内部にいる」との見方を示した。内部には武装した強硬派の学生が50〜60人いるとみられ、「投降を望んでいる学生たちの脱出が難しい」と説明。ガジ師が「女子学生たちを人間の盾にしている」と非難していた。
一方、ムシャラフ大統領は5日、治安部隊に対して人的被害を極力避けるよう命令。部隊は拡声機で学生たちに投降を呼びかける一方、威嚇射撃を繰り返して圧力を強めていた。これに対し、強硬派の学生たちは建物内部から散発的に自動小銃を撃って抵抗を続けていた。
神学生らは今年1月、市当局が公有地に違法に建てられたモスクを取り壊したのを機に、市内の児童図書館を占拠。3月以降、「イスラムの教えに反する」と主張してビデオ店に販売中止を強要するなど、独自の「宗教警察」活動に乗り出した。
さらに6月下旬には「売春に関与した」として、学生が市内の鍼灸(しんきゅう)院の中国人従業員を一時拉致するなど、活動を先鋭化させていた。
政府は治安部隊を配置して学生たちの動きを牽制(けんせい)したが、今月3日、学生が警戒中の警官を襲ったのを機に治安部隊との銃撃戦に発展。シェルパオ内相によると、5日午後までに少なくとも19人が死亡した。
http://www.asahi.com/international/update/0706/TKY200707050371.html