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2007年07月05日(木) 03時01分

グッドウィル名義借りか、一部支店に派遣元責任者を置かず読売新聞

 グッドウィル・グループの人材派遣大手「グッドウィル」(東京都港区)の一部の支店で、労働者派遣法で配置が義務付けられた「派遣元責任者」が不在になっていることが、関係者の話でわかった。

 同社では、労働局の行政指導を免れるために、こうした支店の派遣元責任者を他支店の社員が務めているように装う名義借りや、社員に資格があるように見せかける経歴の偽装が恒常的に行われていたという。厚生労働省でも実態調査を始める。

 派遣元責任者は、派遣労働者からの苦情の受け付けや、安全衛生の管理、派遣先企業との連絡調整などにあたる。指定講座を受講し、成年後に3年以上、雇用管理の経験を有することなどが有資格者の条件。労働者派遣法では、派遣されている労働者の権利を守るために、労働者100人以下の事業所は1人、100人超200人以下は2人などと定数を決めている。

 ところが、複数の関係者によると、同社の一部支店では、社員の入れ替わりが激しく、派遣元責任者が不在になるケースが頻繁に起きていた。このため、労働局から調査の通告があると、人事異動を装って有資格者を配置したことにして、行政指導を免れていたという。

 東北地方の元支店長は、経理担当のアルバイトを名義だけ県内の別の支店の派遣元責任者にしたり、同じ社員に2支店の責任者をかけ持ちさせたりしていたと証言。「労働局の調査は20〜30分程度の形式的なものなので、本人が不在でもばれない。名義借りは常態化していた」と話した。

 また、西日本の支店では、大学卒業後間もない社員を、3年以上の実務経験が必要な派遣元責任者とするため、「大学中退」と経歴を詐称させていた。他県勤務の社員を派遣元責任者とし、90キロ以上離れた隣県の支店に特急列車で通っていることにしていたケースもあったという。

 同省は、名義借りについて「支店で派遣労働者を管理している実態がなければ『架空』の派遣元責任者ということになる。事実とすれば問題だ」としている。同社の場合、5月末時点の事業所数は853で、少なくとも同数の派遣元責任者が必要だが、別の人材派遣会社幹部は「業界は離職率が高く、それだけの人数を確保するのは難しいはず。相当無理をしているのではないか」と指摘している。

 グッドウィル・グループでは、傘下の訪問介護大手「コムスン」でも、勤務実態のないヘルパーを常勤と偽るなどして介護事業所の指定を受けていた不正が発覚しており、グループの体質が問われそうだ。

 同グループ広報IR部では「法令を順守し、派遣元責任者は不足なく配置している」とコメントしている。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070705i201.htm