宗教的理由による輸血拒否への医療機関の対応について、日本輸血・細胞治療学会などの合同委員会(座長=大戸斉・福島県立医大教授)が新しい指針の素案をまとめ、30日公表した。患者が15歳未満の場合は、親権者が輸血を拒否しても必要であれば輸血を行うとしている。輸血を拒否して小児の生命を危険にさらすのは「親権の乱用」にあたると判断した。
輸血を拒む宗教団体「エホバの証人」などへの対応をめぐっては、同学会の前身である日本輸血学会が98年に報告書を公表。12歳未満の患者では親が輸血を拒んでも救命を優先し、12歳以上18歳未満は「線引きをするには難しい点が多い」として引き続き検討するとしていた。
新しい指針は、日本外科学会、日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本麻酔科学会を含む5学会の合同委員会が昨年検討を始めた。素案では、患者が18歳以上の場合は本人の意思に従う▽15歳以上18歳未満の場合は親権者か本人のどちらかが希望すれば輸血する▽15歳未満の場合は輸血が最終的に必要ならば行う。関係学会でさらに検討し、今年中に指針をまとめる考えだという。
合同委は、東京都内で開いたシンポジウムで素案を公表した。会場には「エホバの証人」の代表者も参加し、「12歳でも強く輸血拒否の意思をもつ子どももいる。年齢で一律に区切るのではなく、個々の子どもに応じて対応してほしい」などと訴えた。
宗教的輸血拒否については最高裁が00年、患者の輸血拒否を人格権として尊重するよう求める判決を出した。ただ、患者が小児の場合には、05年の大阪家裁の決定などのように必要な医療を親権者が拒否することを「親権の乱用」として親権を一時的に停止し、小児の治療を可能にする司法判断も出てきている。