韓国で「振り込め詐欺」の被害が急増している。この1年間で被害額は330億ウォン(約44億円)に達した。5月には現役判事が6000万ウォンをだまし取られる事件まで発生。手を焼く韓国警察庁は6〜7月を特別取り締まり月間に指定した。中国と台湾の犯罪組織が「新たな市場」を求めて韓国に触手を伸ばしたようだ。
韓国での通り名は「ボイス・フィッシング」。自動音声テープを使い、大手百貨店や信販会社を名乗ってカード取引代金の引き落としを通告。「質問があれば9番のボタンを押せ」と続ける。被害者が問い合わせると、犯人が通話口で「カード会社の間違い」「預金を保護する」などと偽り、現金自動出入機(ATM)を使って犯人の口座に振り込ませる。
捜査当局によれば、検挙した約400人のうち中国・台湾人が約6割。通話口の犯人の韓国語には強い外国なまりがある。中国・台湾人が司令塔、中国朝鮮族が電話係、韓国人が口座開設・引き出し係とみている。
台湾では3〜4年ほど前から「振り込め詐欺」が流行。駐韓台北代表部によれば、犯罪集団の本部が中国、支部が台湾にそれぞれあるという。台湾内で防犯意識が高まったため、韓国に犯罪現場を移したようだ。韓国警察庁は「日本の犯罪とは無関係」としている。
現役判事がだまされたのは5月末。朝、20代の息子を装った犯人が電話で「助けて」と悲鳴を上げた。あわてた判事が6000万ウォンを送金。午後に偽電話と判明したが、全額引き出されていた。判事が被害に遭い、韓国で振り込め詐欺への防犯意識を高める事件となった。
韓国・全国銀行連合会の姜尚求・受信制度チーム部長は「マレーシアやタイで被害が出始めたと聞いている」と国際的な広がりを指摘する。
http://www.asahi.com/international/update/0626/TKY200706260430.html